2013年05月08日

"お節介"

何でも自分で出来ると思っていた

洋服を選ぶことも
天気を知ることも
家の施錠をすることも
持ち物を揃えることも
簡単なものなら食事だって

何でも出来る
普通は出来て当たり前

だけどやってくれる人がいた

今日はこの服が良いわ
雨が降るから傘は持って行ってね
いってらっしゃい、気をつけて行ってきて
忘れ物はないようにしておいたからね
今日の晩御飯はあなたの好きな肉じゃがよ

うっとおしいとさえ思っていた
何でも自分でしたいのに
何でも自分で出来るのに
何で全部先にしてしまうんだろう

でもいいか
必要なときはいつだって出来るから
今はやってもらっていたって

そんなことを考えていた

けれど必要ないと判断した行動は
頭の中から抜け落ちていくのだ
びっくりするほどに
寒気がするほどに

洋服の場所がわからない
家の鍵がどこにあるのかもわからない
天気予報なんて見ないから雨に降られる
カバンの中身なんて確かめないから忘れ物だらけになる
コンビニで晩御飯を買うのも一苦労

お節介はうっとおしいだけのものじゃなかった
こんなにも人一人ダメにするものだ

そして

こんなにもありがたさを痛感するものだ
思い上がっていた自分を恥じる
こんなに尽くしてくれていたんだ

一人きりのリビングで噛み締めた苦い思いと決意

帰ってきたら何でも一緒にやろう
何でも一から教わろう
あいつのために、何でもやろう
posted by 華涼紗乃 at 23:42| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"落とし物"

友達と公園で遊んだ帰り道
道端に丸く光るものが落ちていた

拾ってみるとつやつやしてて
ほんのりピンク色の可愛い玉
少女の心をくすぐるには十分なものだった

今思うと安いアクセサリーに使われた
真珠っぽいビーズだったのだろう

ひとつ拾うと少し先にもうひとつ
ふたつ拾うと少し先にまたひとつ
まるで導かれるように
ひとつひとつ拾っていった

空は明るいオレンジ色
道を照らして玉はとても見つけやすかった

気づいたらあたりは暗くなりかけて
玉も闇にまぎれて見えなくなった
あの角を曲がれば
また見つかるのかもしれないけれど
持っていたポシェットいっぱいに集まったから
もういいかと思って引き返した

お母さんにネックレスにしてもらおうと
ウキウキしながら帰った覚えがある

結局、玉は道に落ちてたものを
拾ってくるなんて気持ち悪い!と
母に捨てられてしまった
そして絶対に物を拾うなとすごい剣幕で
怒られた覚えがある

そのことを最近夢に良く見る
あの角を曲がっていれば何が待っていたのか
どこへ連れて行かれたのか
あの玉は何であんなに落ちていたのか

曲がり角のブロック塀だけ
やけに鮮明に思い出されて

落とし物はいったい誰のものだったのだろう
posted by 華涼紗乃 at 23:41| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"おもちゃ箱"

片腕のない着せ替え人形
開いたコンパクトの割れた鏡
おままごとの食器はみんな欠けてて
無事なものはひとつもない

もうとうの昔に壊れてしまったもの
忘れるくらい昔々のこと
でもそのときの私には
これは壊れたものを元に戻す道具で
これがあれば全部元に戻せると本気で思っていた

大事な大事なおもちゃ
あの人と一緒に遊んだ思い出の品

結局こんな状態にしたのも
あの人だったけれど

文字通りおもちゃ箱をひっくり返して
地面にたたきつけた
子どものおもちゃだから
そう簡単に壊れやしない
だから丁寧に壊したり
一部だけ捨てたりしていった

嫌な思い出のほうが圧倒的に多いのに
このおもちゃだけはこんな惨めな姿になっても
私の中の楽しかった時代を蘇らせる

もういらないのに
もう戻れないのに

今度こそ捨ててしまおう
あの人ももう遠くへ行った

新しい道を踏み出すのには邪魔なごみでしかない
posted by 華涼紗乃 at 23:40| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第27週:樋川→華涼

++++


ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『メゾネット』
『バリアフリー』
『クロゼット』


・期限は2013年5月15日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年5月13日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


++++
posted by 樋川春樹 at 02:36| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『イケメン』

 あたしはいったい何のためにうまれたんだろう
 もとからそんなに期待していたわけじゃなかったにせよ
 それにしたってあたしに与えられた運命はひどすぎってモンだった

 誰もがうらやむイケメンではあったけれど責任感ゼロの父親は
 母親の妊娠が発覚すると同時に何処かへ姿をくらまし
 母親はどうにかあたしを産みはしたもののあっと言う間に精神崩壊
 カオだけで男を判断するような浅はかな人間だからメンタル面の弱いこと
 泣きわめくことしか満足に出来ない赤ん坊という生き物をすぐに持て余すようになった

 人間は誰も望まれてこの世に生まれてくるなんてウソもいいところ
 あたしは最初っから誰にとっても邪魔物で何の役にも立たない要らない子だった

 優しい言葉をかけられることもなく
 愛情のこもった腕に抱かれることもなく

 ほんとにいったい何のためにうまれたんだろう
 不幸で悲惨な目に遭うためだけに来たようなものじゃない
posted by 樋川春樹 at 02:34| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ろくろく』

 人間の運命は
 縦糸
 横糸
 相互に絡み合って
 長い長いタペストリーをつくる
 無作為なようでいて
 綿密に計算され尽くした模様を描く
 ひとにぎりの勝利と幸福
 それ以外は膨大な量の敗北と不幸
 歴史と呼ばれるタペストリーを

 きっと『唯一の』神様とやらが求める
 壮大で荘厳なその芸術品に
 ろくろく考えもせずに汚点をつける
 ひとの身でありながらヒトならざる存在に身を堕とし
 結末すらも予想せずに複雑な模様に手をかける

 縺れあう糸を何本引き抜こうと断ち切ろうと
 何本の糸の色を変えようと質を変えようと
 ヒトならざる存在であるとは言えかつてひとであった卑小なこの身には
 結局無限の時間を費やしたとしても
 運命が織り上げる歴史のすべてを改竄することはできない
posted by 樋川春樹 at 02:34| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『砂糖』

 幸福になりたかったんだ。

 つぶやくように言って、けれど彼はすぐに激しく頭を振って自らの言葉を打ち消す。

 そうじゃない、ただ不幸なままでいたくなかっただけなんだ。
 ささやかな願いだろう。
 ちっぽけな望みだろう。
 この世界はそれすらも叶えてくれないと言うのか?

 後悔と絶望に翳る瞳で、自分の気持ちを小さな声で吐き出して、そうして彼は、誰の返答も待たずに自身の中で完結している台詞を繋げる。

 ああ、わかっている、わかっていた、たったそれだけのことすらも、世界は叶えてはくれないのだ、と。
 最初から何もかも全部、理解していた。把握していたさ。

 それでも。
 それでもひとは、希望に向かって手を伸ばすものだろう。
 そうだろう。
 そうせずにはいられないものだろう?

 綺麗に繊細につくられた上等で高級な砂糖菓子に手を出したわけじゃない。
 ありふれた普通のパン、どこにでもある、たやすく触れられるそれが欲しかっただけ。

 それすらも。
 それすらも、過ぎた望みだと言うのだろうか。
posted by 樋川春樹 at 02:33| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月01日

【指令】第26週:華涼→樋川

++++


ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『砂糖』
『ろくろく』
『イケメン』

・期限は2013年5月8日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年5月6日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


++++
posted by 華涼紗乃 at 19:11| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"デッドスペース"

常々余裕がないと思う
自分のことで本当に手一杯
人を気遣う余裕はない

けれど周りの評判は
ものすごく気を遣う人
相反してると思うかもしれないけれど
ようやく納得する答えを導けた

気を遣うのは気を遣って感謝されるか
自分の評判が上がる場合か
自分が安心できる場合のみ

大丈夫?と聞かれたとする
これには大丈夫と答えなくてはいけない
大丈夫じゃないよと答えると
「えっ?」と心底意外そうな顔をされる

だったらほっといて欲しいと思うのだが
いい人を演じたいのでそうもいかない

窮屈そうだなと思う

心の広さはきっと生まれたときは
みんな同じで
知らない間にいろんな影響を受けて
間仕切りをガンガン立てて行くのだろう
ふっと気づけば身動きが取れない

仕切りを破壊していけば
きっともっと広々するだろうに

どうでもいいやと思えない人は大変だ

仕切りをサクサク立ててる振りして
誰にも入れないところで
のびのびしている私とは大違い

デットスペースの活用法なんて
いくらでもあるのにな

posted by 華涼紗乃 at 18:57| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"年上"

たまに新人さんが叱責されている声が聞こえる
何らかのミスをしたんだと思う

新人さんはあまりの勢いに涙声
それに多分ますます神経が逆撫でされている
ああ、逆効果だ

社会人としての自覚が足りないと
訳知り顔で説教しているけれど
私よりは全然年下

今日は仕事が忙しい
ものすごい勢いでキータッチの音がしてる
怒ってる方も怒られてる方も仕事はしながらだ

それを見ていると老婆心ながら思う
仕事がすく時間帯に他でやるほうが良いのでは?
思い切り話し合えるし、話も通じやすい
お互いに考える暇があるから感情論にはなりにくい

みんな聞き耳立てて上の空で仕事してるし
当事者がそもそもそんな感じだ

案の定、成績を見てみると
当事者を筆頭にミスが明らかに増えている

こんなことで大丈夫なのだろうか
どっちもどっちでまだまだ頼りない

ああ、年取るってこういうことなんだなぁと
妙に感慨にふける一幕

自分はまだまだだと思ってるんだけど
少しはこなれて
ちょっとは成長してたらいいなと思った
posted by 華涼紗乃 at 18:56| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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