2012年12月19日

"シュレッダー"

バリバリとすごい勢いで噛み砕く
書類10枚程度ならあっという間
CDだってDVDだって
プラスチックのカード類だって難なく粉砕

最近はどこのオフィスでもある
俺もそんな中の一台

毎日何かしら粉砕したいものを持ってくる
何でニンゲンは
そうなんでも粉々にしないと気がすまないんだろうね?
まあ、そうしてもらわないと俺も存在意義がないけど

よく見ていて気づいたのは俺を使うのは
だいたいそのオフィスの中でも下っ端の人間のようだということ
俺のいるところはオフィスのはずれだから
そんな連中は俺を使いながら
愚痴をはいたり、ためいきついたり、
ぼーっとしたり、気合入れたり、
いろいろな表情を見せてくれる

それを見ているとニンゲンは本当に大変そうだ

あるとき、若い男がやってきた
頭も何だかくしゃっとしてるし
ネクタイもバランスがおかしい
大あくびをしながら俺のスイッチを押した

俺はいつものように動き出したら
いつもと違う手ごたえ
あ、ネクタイが巻き込んでやがる
…やれやれ
スイッチポンの簡単設計の俺様も
まともに使えないようじゃ先が見えたな

…ってまだ気づかねえのかよ!
おい、俺は自分では止められねぇんだよ!
さっさと気づけよ、首締まって死ぬぞ!
posted by 華涼紗乃 at 18:59| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"ペットボトル"

姉がいつのまにかペットボトル貯金を始めていた
こないだ用事があって部屋に入ったら
小銭がぎっしり入ったペットボトルが2つ

何だか違和感
こういうのは姉の趣味じゃない
イラっときた

これ、どうしたの?
お金ためてるんだ、年末は何かと物入りだしな

えーえー、クリスマスにお正月に
カップルにとってはイベント目白押しですからね!

な、そういう意味じゃなくてだな!

じゃあ、どういう意味だよ?
だいたい金ためるにしてもこんなの姉ちゃんっぽくねえよな?
そ、それは、その
何?このペットボトル、カレシに買ってもらったの?
う…もう!弟には関係ないだろう!
え?マジ?気持ちわるっ!
気持ち悪いって言うな!もう出てけ!

背中をぐいぐい押されて
部屋から追い出されてしまった
しかし、あんなものまで取っておくなんて
ちょっとすごい
ペットボトルって積極的にリサイクルに出すものだろう!

確か告白したのは彼氏のほうだったのに
何で姉ちゃんがあんなにハマってるんだろ?

…ちょっと本気で心配になってきた

posted by 華涼紗乃 at 18:57| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"コンサート"

もうすぐ世界が滅びる日だね
あんなのもう随分前に否定されたよ?
わからないよ、きっと何かは起きるんだよ
馬鹿馬鹿しい、いつも通りに決まってるよ

すれ違い様に聞こえた会話

立ち止まって振り返った
笑顔で話しながら遠ざかってゆく二人

きっと話を振ったほうも
信じてなどいないのだろう
心の片隅でほんの数パーセント
本当に滅びたらどうなるだろう?なんて
空想や期待はしているとしても

しかし、それは本当に現実のものとなる

あと数日でこの星は大きく動き出す
雲は渦巻き、地はひび割れ、海は荒れ狂う
建物は崩れ落ち、交通機関はすべてストップ
通信機器も全部使えなくなる予定だ

人が築き上げた世界が
人に対して牙をむく

どんな轟音が鳴り響き
どんな悲鳴が響き渡るのか
今からとても楽しみだ

どんな生命も助かりはしない
だけど一瞬で死滅するわけではない

だから出来るだけ長く生きるよ
人々の絶望の声を
少しでも長く聞いていたいから

カウントダウンは始まっている
コンサートはもうすぐ開演する

posted by 華涼紗乃 at 18:56| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月12日

"どしゃ降り"

傘を持ってくるのを忘れた

ビルのエントランスから
ガラス越しに激しい雨が降っているのが見える
まだ午後三時なのに真っ暗で
車が跳ね上げる水しぶきが大きい
傘がなければものの数秒で
下着までぐっしょりだろう

コンビニまでは走っても5分はかかりそうだ

普通なら少し様子を見てみようとか
誰かに迎えに来てもらおうとか
タクシーを呼ぶとか
いろいろ考えるのだろうけど

あいにく私は
時間の定まらない待ち時間は嫌いだし
こんな時間にフリーの友人も家族もいない
そしてお金もない

なので濡れて帰るという選択肢を普通に選ぶ

まずは濡れて困るものを
できるだけ耐水性のありそうなものでぐるぐる巻きにして
鞄の中に入れなおす

そして雨など感じないかのような顔をして出て行く
走るのは嫌い、だから普通に歩く

外に出ると待ってましたと襲い掛かってきた
激しい風と雨

冷たい、雨粒が身体にあたる感触がうっとおしい
首筋が濡れて冷えていく
髪が濡れて顔に張り付く
眼鏡はあっという間に水滴で前が見えなくなった

外国人は傘をささないというが
正気の沙汰ではない
ああ、傘ってなんてすばらしいものだ
絶対、これから傘だけは持ち歩こう

その後、
傘をさしかけてくれる人がいたとか
翌日風邪を引いたというイベントはなかったけど
とりあえず新しい折り畳み傘が私の鞄に増えた

posted by 華涼紗乃 at 19:20| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"研究所"

パチリとスイッチを入れると
そこは黒くて四角い機械だらけの空間
何の音もせず
何のにおいもしない
一見すると倉庫のような部屋だ

部屋の中央に立ってインカムをセット
深呼吸をして一言
「起動」とつぶやく

そのとたんに
あらゆるインジケーターが点灯・点滅
モーターが回り始めた

天井付近に設置してある
6台の小さめのディスプレイには
若い女性がそれぞれ6人映し出された

画面には分割されて
彼女たちの個人情報
彼女たちのSNSサイト
彼女たちが現在いる場所の防犯カメラ映像
彼女たちの部屋の画像が
そこにあるのが当然のように表示されている

僕の研究のために若い女性の動向を調査している
データ収集と実益を兼ねて
ストーキングの手助けや
素行、浮気調査も同時に行っている

今日も誰一人、気づかれることなく
無事にデータは集め終わっているようだ
もっとも今まで一人として
調査終了まで気づいた人はいなかったのだけど

データを確認すると一人の調査対象に動きがあったようだ
早速クライアントに回線を繋ぐと
指示とすぐに振込があった

彼女の誰にも見られたくない部分を
記録から切り取って動画サイトにアップする
アドレスは複数のSNSアカウントでネット上にばら撒いた

さて彼女の身近に届くまでどのくらいかかるかな

ここから一歩も動かずに人を一人破滅させるのに
いったいどれくらいの時間が必要か
どのルートで情報が届くか監視する

日本ではほぼすべて障害や問題はクリアした
今度は海外への進出を試みてみよう

幸い軍資金は尽きる心配がなさそうだ
posted by 華涼紗乃 at 19:19| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"設計図"

君を見ていると
白い紙に濃紺の線が何本も引かれている
整然とした設計図を思い出す

自分の性格、容姿、能力
すべてを熟知した上で書かれた
最大限面白い人生を送るための設計図

普通は
自分のことを自分で知ることすら難しい
設計図なんて夢のまた夢

時間に流され
周りに促され
何となく漂うのが人生で
みんなそういう生き方でうまくいっていた

けど最近はそうでもない
誰でも大人になれば出来ると思っていたことが
気がつけば何ひとつ自分にはないことが
たくさんたくさんあるのだ

君は言う
だからデザインするのだと
何かを成し遂げるには
自分で動き出さなきゃ始まらないものなんだと

君が作った素敵なお家の中で
君の小さな子どもと遊んで
君が作ってくれたお菓子を食べて
君が創った歌を聞く
来週には海外に行きそのまま永住するそうだ

そんな君を見ているだけで
何でもかなうんだと思えるよ
自分でも出来るんだと勘違いできる
その淡い希望だけで
私はまた流れていけそうな気がする
posted by 華涼紗乃 at 19:18| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月05日

"待ち伏せ"

姉ちゃんを待ち伏せてみた

特に意味はない
姉ちゃんの学校は俺の通学路の途中にあるから
ときどき校門で待ってる

メールで一報
すれ違いになっちゃ時間を無駄にするから

いつもは
「わかった、すぐ行く」とか
「用事で遅くなるから先に帰って」とかくる

メールの着信音がした
さて、どうかな
「かかかかか、かえれ!」
…姉ちゃん、メールでどもれるってすごいね
ため息をついてにやりと笑う
「嫌だ」
ソッコウ送ってやった

校門から校舎をみた
こちらを見ている姉の姿が窓にあるはずだ
俺が帰るかどうか見てなくちゃ心配なはず

三階右から三番目の教室
…べったり張り付く姉の姿が見えた
そこから良く見えるように体勢を変える

しっしと追い払うような身振りをする姉に
にっこり笑ってひらひらと手を振る

今日こそは面拝ませてもらおう
弟としては当然知っておくべきだからな
posted by 華涼紗乃 at 19:04| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"半信半疑"

体調が悪いといつも連絡がある
律儀に律儀に毎日決まった時間に

その電話を私がとることはないけれど
決まった時間にいつも鳴るから覚えてしまった

一日、一週間、一ヶ月…
そうやって過ぎていった
指を折って数えると
もう半年くらいになる

そんなに身体の調子が悪いと入院ものだと思う
それかこんなことをやっている場合ではない
今すぐ病院に行って適切な治療を受けるべき

何よりたまに姿を見たときは
実に元気そうに笑っているのだ
どこかに出かけた話なんかして

最初は私も心配したけれど
少しずつ疑いだす
それはやがて信じる割合を抜いて
半分になり
もう今は信じてるフリをするだけになってしまった

大型連休が明けて姿を見たけど
また大型連休に入ってしまったらしい

次はいつ姿を見られるのやら
やっと楽になれると思ったけれど

まだまだ先は長そうだ
とっくの昔に放棄して
適当にやってるけど

それでも落胆はするんだよ
本当にひどい落胆を
全然信じていなくても、ね
posted by 華涼紗乃 at 19:03| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"吸血鬼"

家に帰れば迎えてくれる
ふわふわの白い毛に覆われた動物
猫に似ているがそうではなく
猫耳の位置に小さな丸っこくて硬い角が2本

玄関で靴を脱いでいる僕の前で
ぷかりとあくびをする
口の中には可愛い外見からは想像できないほど
鋭く長い2本の牙

そう、コイツは吸血鬼、僕のペット
僕の血がコイツの食事
血液以外は何も摂取しない
僕の血で出来ているといっても過言ではないから
僕の分身といっていいかもしれない

前脚でポンと僕の背中を叩く
はいはい、ご飯だね、ちょっと待って

吸血鬼はフィクションだと信じられてきたけど
本当はどこかにいるらしい
コイツらはその改良版なのだそうだ
一人の人間の血液のみを栄養源とするため
その血液が悪いものだと
コイツの発育や体調も当然悪くなる

自分の健康管理が自分だけでなく
コイツにも影響してしまうわけだ
そうすると不思議なもので
暴飲暴食を繰り返していたり
ヘビースモーカーだったりしても
ぴたりとやめ健康に気をつけるようになるという

もっとも自分をいじめて
コイツらを苦しめる倒錯者もいるみたいだが

ともあれ食事だ
今日も有機野菜をたくさん使った
スープを飲まなくちゃ

シャツを肘までまくって
手のひらを上に向けて手首の内側を見せた
目をきらりと輝かせカプリと噛み付く

ほんと、美味そうに飲むんだな
背中を撫でるこの瞬間が僕の至福のひととき
posted by 華涼紗乃 at 19:02| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月28日

"らせん階段"

新しいリラックス方法だと偽って
君を呼び出して長椅子に寝かせた

あとは僕の質問に答えさせるだけ

あなたは長い螺旋階段を降りています
長く長く階段の先は闇に沈んでいます
一段一段ひたすら降りていってください

…さあ、あなたはどんな気持ちですか?

「…怖い、暗いし、疲れてきたわ」

そのまま休まず降り続けていると
螺旋階段の壁に
いろいろな風景が映りだしました
さてそれはどんな風景

「そうね…小さい頃のときのものが多いわ」

具体的に。

「七五三のときの着物を着た姿。
 中学校の入学式。
 高校の文化祭。
 大学の卒業論文のとき。
 初出勤のとき…」

彼女の話はとめどなく続く

それがつい三日前のことになったとき

ストップ!
あと20段で螺旋階段が終わります

「え…?もう終わるの?」

ええ、怖くて、暗くて、疲れる
階段はもう終わりますよ
良かったですね、あなたはほっとします

「え、ええ…。
 そうね、何だかゆっくり眠れる気がするわ」

一段一段降りていってください
さあ、あと10段
9、8、7、6、5、4、3、2、1…

彼女は大きく深呼吸をして、そして静かになった

口元に手のひらを近づける
呼吸は感じない
首元に指をあてても
脈を感じない

螺旋階段は人生の象徴
朝昼晩、春夏秋冬
繰り返してるだけに見えてもそれは違う

壁に映ったのは走馬灯の代わり

眠るように旅立てて良かったね
これで永遠におやすみ
posted by 華涼紗乃 at 20:30| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"主役"

あんまり慣れていないのだ
自分のこの状況に

女の子っぽい洋服着て
アクセサリーとかつけて
軽くメイクとかして
今日は手作りお菓子まで用意してしまった

好きだと言われて
舞い上がって
騙されてるんじゃないかとかも思いながら
何だかびくびくおどおどして

普通、好きだって言ったほうが
緊張するもんなのに
相手はいつも余裕っぽくて
何度か一緒に出かけたりしたが
まだ慣れない

でも一緒にいると心地いい
努力した分必ず褒めてくれる
ちゃんとエスコートしてくれてる
…大事にされてると感じる

まるで恋愛ドラマの主役のようだ
気恥ずかしいけどいい感じだ
弟がうらやましがって
ギリギリしてるのもいい気味だ

…慣れないけど頑張ろうと思う
た、体験できることはしておかないとな
posted by 華涼紗乃 at 20:29| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"ホットケーキ"

…美味しいよ?

姉ちゃんが作ったマフィンを
一口ほおばって言った

心配そうな姉ちゃんの顔が
みるみる得意満面になる

…男は簡単なものだな!
あはは!こんなの簡単に出来るんだぞ!
魔法の粉があるのだ!

…何その、怪しげなもの?

ホットケーキミックスだ!
これがあれば
クッキー、スコーン、マフィン、カップケーキ何でも作れるんだぞ!
簡単にだ!
女子の手作りお菓子に感動する男などすぐに騙せるわ!
あははは!

…あのね、姉ちゃん
そりゃ本格的なもの作れる人はすごいけど
自分の実力に見合って
しかも美味しいもの作ろうと思って
必死で調べて練習してこれ作ったんだよね?
彼氏の喜ぶ顔見たくて頑張ったんだよね?
たとえ魔法の粉を使ってたって
それだけで男は十分めちゃめちゃ嬉しいよ?

そういうと姉ちゃんは
今まで見たこともないくらい
真っ赤な顔をしてプルプル震えてた

お、弟のクセに!

え?

弟のクセに〜!!
姉ちゃんは叫びながら自分の部屋に走っていった

やれやれ、なんて可愛い姉ちゃんだろうね
彼氏うらやましいっていうか
憎いというか
いっそ殺してやりたいっていうか…

マフィン全部食ってやろうかな
posted by 華涼紗乃 at 20:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月21日

"先約"

私は自分の意思でここにいる

ちゃんと選ばせてくれた
ここに遺るか、先に逝くか

あなたには見えないし
聞こえない、触れ合うことも出来ない
だけど私はあなたのそばで
あなたを感じていたかったから

あなたは私を喪って
すごく悲しんでくれた
すごく泣いてくれた
日常になかなか戻れなくて
みんなに心配かけてたね

助けてあげられなくて
すごく悔しくてすごく辛かった
それでもそばにいるのが嬉しかったんだ

やがてあなたは少しずつ前に向いた
仏壇も綺麗にしてくれて
お墓参りもよくしてくれるけれど
私の存在はあなたの中で
もう生々しくはなくなり始めた
そこでもういいかって思った

二人で戯れにした約束だけど
それを今かなえようと思う

「未練を残さずきっぱり逝く」

私の存在は
あなたに影響は与えないけど
いつまでもそばにいるのは
やっぱり良くない気がする

向こうで待ってる
また逢おうね、絶対だよ
幸せになってね

さようなら




…ああ、やっと言えたよ
posted by 華涼紗乃 at 18:13| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"光源"

スポットライトが向けられた

白く強く
周りの闇も存在自体を
あっという間に消される

ここはもう現実ではない
ここはもう日常ではない

一歩踏み込んでしまったら
もう私は別人で
違う時間を歩み始める

あの光の強さには
もう慣れたはずだったのに
リアルに引き返せない
その緊迫感は相変わらず身体の芯を震わせる

白く強く
目も潰されかねない
あの光を
その光の源を

あえてこちらから睨み付ける

きびすを返したらもう振り向かない

背筋を伸ばして
大またで
足音を響かせて

さあ、その世界の中央へ!
posted by 華涼紗乃 at 18:12| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"廊下"

校舎中がオレンジ色の光で満たされる
影は長く光は柔らかく
綺麗な夕焼け

あなたの顔も半分が闇に沈む
「行かないで」
連れ戻すように
引き寄せて口づける

誰もいない教室
誰もいない校庭
休日の学校に忍び込んだ

いつも一緒にいるココで
他の何にも邪魔されずに
あなたと二人きりになりたかったの

そして思い切り
触れ合いたかったの

あなたは
ふんわりと笑みを浮かべて
はだけた首元にもう一度唇を寄せた

自然とのけぞった瞬間に
身体ががくんとこわばった

廊下に走った黒い影
足音はしなかった
気配さえもなかったけれど

驚きと怖さとで震える私を
あなたは強く抱きしめた

気のせい、そう気のせい

死角が多い廊下は
死角の少ない教室を見張るには最適
影の口元は歪んだ笑いを浮かべていた
posted by 華涼紗乃 at 18:11| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月14日

"氷水"

グラスいっぱいに氷を入れる
ゆっくりと冷えた水を注ぎ込む

お風呂上りにいつも飲む一杯
お酒は昔から飲めないし
お茶は何だかかっこ悪いし
ジュースは太るから無理
そうすると自然と水に落ち着いた

グラスを掲げると
キラキラと水滴にLEDの光が反射する
ごくごくと思い切り飲むと
のどを通る感触が気持ちよくて
胸の間を通る感覚がスッとして

一日のいろんなものが
落ち着くべきところに収まる気がする

昨日はいい日だったかどうか覚えてないし
今日もあんまりいい日ではなかったから
明日はちょっといいことがあればいいなぁ〜

この瞬間に思い出せるくらいに

お風呂で温まった体が徐々に冷え始める
さあ、寝る準備は万端
暖かい布団に包まって、さあおやすみ

残りの氷水は悪夢を見たときのために
枕元においておこう

posted by 華涼紗乃 at 15:42| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"一進一退"

ジリジリと、ジリジリと
抜き足、差し足、忍び足
ソロソロと、ソロソロと
慎重に、真剣に、緊張感を持って

気づかれないように
ちょっとずつ、ちょっとずつ
近づいているつもりなのに

心も、身体も、何もかも

根回しはとっくに昔に済ませたし
本人以外は周知の事実

そんな完璧な包囲網なのに
するりするりとあなたは逃げる
投げた釣り針もスルー
振り上げた網もかわして

なかなか私のものになってくれない

こんなに好きなのに
こんなに好きなのになぁ…
どうしてうまくいかないんだろう

あなたはそんな私を見て
ほくそ笑んでるのか、嘲笑ってるのか
いつも良くわからない

でも、負けない
いつか絶対捕まえてみせる

逃げなければ、諦めなければ
いつか手が届くはず
posted by 華涼紗乃 at 15:41| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"隠しごと"

ナルシストのあなたに
ひとつ教えてあげただけ

鏡を見ることが好きなあなたに
とっておきのプレゼント

自分以外の誰しもを見下し
親友だと思っていたのは私だけで
本当はただの引き立て役

それだけなら良かったけれど
ストラップ、アクセサリー、ぬいぐるみにお金
初めて愛したあの人だって
あなたは全部私から盗っていった

「私に仲良くしてもらえるだけありがたいと思いなさいよね。」
そんな言葉と嘲笑を投げつけて

だから復讐、シンプルに
とてもスタイリッシュに

鏡の自分に向かって
しっかり目を合わせて
呪文を唱えるの
そしたら
綺麗になれるって雑誌載ってたよ

素直でバカで彼女に
隠しごとなんてしない私の言葉
全部鵜呑みにしちゃったみたい

数週間で彼女は私の前から姿を消した
携帯に着信はあったけどそっと着信拒否にした

鏡の中の新しい狂った友達にどうぞよろしく
posted by 華涼紗乃 at 15:40| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月07日

"順番"

世の中は不条理に出来ている

人の生き死ににまつわることなど特に

人間の作った道理なんて
人間の及ばぬところでは無意味
当たり前のことだ

だけどときどき思っていた
「生きる意欲のある人」と「生きる意欲のない人」
どっちが優先順位が高いのかと

もちろん生きたいという目的の善悪もあるし
意欲の持続についても
考えなくてはいけないとは思う

けど意欲=エネルギーと考えれば
何だか世界のためにも
ないよりはある人たちがいたほうがいいように思う

所詮は泡みたいな考えで何の筋も通っていない

世界ってそういうもので順番は納得いかない形で
日々、人々のもとに訪れている

私の順番が来たとき
果たしてどう思うのか
来て欲しくなかったのか
あるいは待ちわびていたか
posted by 華涼紗乃 at 18:45| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"医師"

あいつは白い服を着た悪魔だ

こっちが詳しいことを知らないのをいいことに
その白衣の威厳と権限にだけ守られてる

ぬらりと光る眼鏡のレンズを
その下の見下しきった視線を
気持ち悪くうごめく手を
忘れたことは一度もないんだ

だから今度は私の番だ
ひだまりが落ちる教室
今日はとてもいい天気
おろしたてのスーツをきて背筋を伸ばす

もうすぐ来るその瞬間が
とってもとっても待ち遠しい

あいつは気づくだろうか
楽しみで仕方ない

私の威厳と権限を
最大限発揮出来るこのフィールドで
家族丸ごと、どん底に落としてあげる

ガラガラと扉が開く
満面の笑みを浮かべて
そちらを向いて立ち上がる

ああ、最初くらい完璧に装いたいのに
口の端に歪んだ笑みが浮かぶのをとめられない
posted by 華涼紗乃 at 18:44| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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