2013年06月26日

『こぢんまり』

 テーブルの上で開いたノートパソコンのまわりに、やることを終えたみんながいつの間にか集まってくる。
 モニタ一面に表示された画像検索の結果一覧、その膨大な写真の列を眺めながら。
 こういう雰囲気がいい、こっちのこれも捨て難いんじゃないか? なんてとりとめのないことを口々に発言し合う。

 どこか静かな町に、こぢんまりとした可愛らしいカフェをつくって、平穏に生きてゆこう。
 ふつうの人間みたいに。

 思いつきの冗談だったその計画は皆で話題に乗せあっているうちにだんだんと明確な夢となり、いつしか叶えたい将来設計へと姿を変えていた。
 どういう内装にするか、どんな感じの食器を揃えるか、扱うメニューはどうするか、こうなったら制服だってデザインしてみよう。

 ドリンク単品にも、ちょっとしたお茶菓子をサービスするようにしよう。クッキーをたくさん焼いておいて、お皿の端にちょっと添えたりして。そうして、半日でも一日中でも長くいてもらえるぐらい、居心地の良い空間にしよう。採算がとれなくても構わない、自分達はお金を儲ける必要なんてないんだから。

 最初の最初からヒトではない彼らと、もうじきヒトではなくなってしまう私とが、人間としての平穏な暮らしに思いを馳せつつ、手が届きそうな錯覚に彩られた希望を語り合う。それはきっと叶わぬ夢などではなく本気でやろうと思えば今すぐにも実現出来る程度のもので、でもそれを本当にはしないでいつだって変更可能な曖昧な幻想として共有することで、私達は「同じ夢をみる」という遊びにいつまでも浸っていられる。
posted by 樋川春樹 at 19:41| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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