2013年06月19日

『乱闘』

 最初に手にされた武器は、棍棒だったろうか、それとも尖った石だったろうか。
 明確な意思のもとに相手に振り下ろされるために手に取られるその道具。
 それを手に入れたその瞬間から、人間の争いの歴史は始まったのに違いない。

 無数の怒号と悲鳴が入り乱れて、ひとつの大きな音になる。
 すぐそばにいる若い兵士はきっと、自分がわめき続けていることを認識していない。
 戦場という特異な状況で間近に迫る死の恐怖と殺戮の衝動に全身を支配されて、完全に我を忘れている者が大半。
 手のつけられない乱闘の中で、味方を−友人達を−手にかけていても、まるで気づいていない。

 愚かしくも悲惨なことだ、と周囲の状況を確認する。
 感情に流されやすい人間達は自分自身をも制御しきれない。
 この大地に染み込む血液の内の何割が流されなくとも良かったものなのか、それを割り出すことはかなり難しいだろう。

 最初に手にされた武器は、どのような意思のもとに振り下ろされたのか?
 愛する者を非道なふるまいから守るため、では、きっとなかっただろう。
posted by 樋川春樹 at 16:29| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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