2013年05月22日

『湿布』

 半分どころか三分の二以上も崩れかけた、持ち主が放棄して久しいその建築物の中で。
 その必要がない、とやめさせようとするボクの拒絶を無視して、彼女はボクの怪我の手当てをした。
 と言ってもその建物には医療用品など中身を床に散乱させた粗末な救急箱がひとつあるきりで元々満足のいくクオリティの医療行為は不可能だったし、そのうえ治療にあたる彼女にしたって出来ることは見るからに不器用極まりない手つきで、血が流れている場所に適当にガーゼを当てたり包帯をぐるぐると巻きつけたり、あるいはとりあえず色が変わっている箇所に湿布を貼りつけてみたりする程度。
 見たところ幼稚園に通っている最中か小学校に上がったばかりかという彼女の年齢を考えれば上出来の処置だと賞賛してあげるべきなんだろうか?
 しかしボクの身体についたそれらの傷はいずれも何の手当てもせずともすぐに塞がりやがては癒えて一つ残らず消え去ってしまうものなのだから、彼女の行為はそもそも無意味なものであって、ボクがわざわざ頭を下げなければならない要素なんか一つもないと思うのだ。
posted by 樋川春樹 at 21:55| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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