2013年04月10日

『フェニックス』

 違う道を歩いていても
 見上げる空はひとつだと

 信じていたから

 不幸になったのだ

 交わらない道をずっと歩いていたのに
 それでも同じ空の下にいると思っていた
 何故そんな風に思っていたのだろう?
 ただ、認めたくなかっただけだ

 違う空の下でたったひとり
 永遠に孤独でいなければならない自分自身を
 認めたくなかった、ただそれだけのために───

 どうしてもわかりあえないものがある
 想像や推測で補えないものがある
 たとえこの世にある全ての書物に目を通し
 あらゆる物事を記憶し分析出来るようになったとしても
 絶対に、絶対に届かないもの

 見上げる空も別のものだと
 割り切れていたなら楽になれただろうか
 自分に備わったもの、何ひとつとして
 周囲と同じではないのだと、本当に思い知れていたなら
 無様にしがみついて
 迷惑をかけずに済んだのだろうか

 いまさら、どれだけ考えを巡らせても、仕方のないことだ

 炎が建物全体に回るまでの時間は
 予想よりも少しだけ短かった
 願わくばこの炎が全てを
 正しかったことも間違っていたことも、
 何もかも綺麗に焼き尽くしてくれますように

 自らの死期を悟り、炎の中に身を投げる不死鳥のように
 幾度もの死を経て何度でもよみがえるフェニックスのように

 人間はそんな風にはなれないとわかっているけれど
 それでも

 肺を焼く熱の中へと

 ゆっくりと進み出る
posted by 樋川春樹 at 23:47| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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