2013年04月10日

『消毒』

 頭の良い子だとほめられて育った

 ききわけなく泣きわめくこともなく
 年下の子をいじめたりもせず
 友達とケンカをしたりもせず

 実に手のかからない子だった

 どのように振る舞えばおとなが喜ぶか知っていただけだ

 感情でぶつかることのない人生だった

 幾通りもの展開を周到に想定した理論は感情の代用となり得る
 先日読んだ小説にそういう殺人鬼の話が載っていたよ
 他人に共感することが理解出来ない男の話

 まるで自分のことのようだった

 誰かが怪我をしたとき
 真っ先に救急箱から消毒液を取り出すような人間だった
 清潔な包帯とガーゼ、ばんそうこう
 でも多分、最初に触れるべきはそれらではなく
 傷を負って不安な思いをしている誰かの背中ではなかったかと───
posted by 樋川春樹 at 23:46| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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