2013年02月27日

『たらふく』

 ひとの生命はいつ尽きるかわからないものだ。
 大抵の人間は漠然と数十年後、まだまだ先だろうと思っている。
 それが今日や明日ではないという保証はどこにも無いと言うのに。
 しかし、根拠もなくそう思い込んでいられるからこそ、ひとは絶望に打ちひしがれることなく生きてゆくことが出来る。
 いつか死ぬことを忘れていられるからこそ。

 一日の仕事を終え心身共にくたびれ果てて帰って来たとしても、ゆったりと風呂に入りさっぱりと清潔な部屋着に着替えて、上等ではなくとも美味いものをたらふく食べて温かな布団の中でぐっすりと眠れば、肉体の疲労も心についたひっかき傷もとりあえずは綺麗に消えて、次の日もまた起き上がって出かけてゆける。
 自分の身の上にこれから起こる生命の終わりも、これまでに起きた無数の理不尽で許せない事柄も、みんな他人事のように忘れていられるから、ひとは日々を平穏に暮らしてゆける。
posted by 樋川春樹 at 03:48| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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