2012年12月26日

『カフェ』

 彼らは人間のように生きてはいないし、そもそも生命ですらないのだと言う。
 出会ってからわりと時間が経ったけれど、私にはまだそれがどういうことなのかよくわからない。
 何も知らない目で見ているぶんには本当に人間と見分けがつかないし、彼らが『狩人』であると認識しつつ接してみてもその違いはまるでわからない───普通の暮らしの中で接している限りは。

 日常から逸脱した場面で考えてみるならば、彼らは明らかに人間とは違う。
 刺されても斬られても撃たれても死ぬことはない───最初から生きていないのだから、死ぬワケがない───どんなに深く大きい傷を負っても、その傷口は見る間にふさがってしまう───自分で自分を修復する機能が備わっているのだと、彼らはこともなげに言う。

 彼らの人間ではない部分を何度目にしても、何も起こらない普通の暮らしに戻って来る度にそれを忘れてしまう。
 平穏な日常の中で共に過ごす彼らは、それぞれの性格を持ちそれぞれの考え方を持ちそれぞれに行動する、他の若者達と何も変わらない。

 私が用意したお昼ご飯を実に美味しそうに平らげて───『狩人』には食事を摂る必要がない、それどころか人間と同じ味覚が備わっているかどうかもよくわからない───満足そうな笑顔を見せて、『マスター』は料理の天才だし絵も上手だから、将来はどこか静かな町でおしゃれなカフェを開けばいい、手書きの文字にかわいいイラストが添えられたメニューなんかをつくって、そうしたら自分達はそのお店をよろこんで手伝うし、『マスター』は求めていた穏やかで落ち着いた暮らしが送れるでしょう? なんて提案してくれる彼らは───人間そのものにしか、私には見えなくて。
posted by 樋川春樹 at 21:54| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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