2012年12月19日

『コットン』

「あーあ、まぁたこんなトコロにひきこもって本ばっか読んでるー」
「……何か用?」
「何か用、ってか、もう夕ご飯の時間だよ! 窓のない部屋にいて時計見ないからわかんないんでしょ。『マスター』が呼んで来てって言ったから来たのー。今日のゴハンはカレーライスだよ!」
「……あぁ、もうそんな時間なのか……ついつい没頭しちゃってたな」
「そんな古臭い本ばっか一日中読んでて、面白い?」
「おマエの相手してるよりは面白い」
「うわヒドい」
「あと、内容を問わずに雑多な知識を入れておくことはボクの役目でもあるからね。ボク達は色んなところに行くだろ。どこでどんな情報が役に立つかわからないから」
「ふーん……イマは何を読んでたの?」
「コットンってものを知らなかった頃のヨーロッパについて。……おマエ、綿ぐらいは知ってるよな」
「まぁたおいらをバカにして! ワタぐらい知ってるよ、こないだクリスマスツリーに雪の代わりに飾った奴みたいなのでしょー」
「……知ってるって言っていいのかな、ソレは……まあいいけど。コットンの現物を知らなかった当時の人間は、遠い異国に羊のなる木が存在して、そこからコットンがとれると思ってた。プランタ・タルタリカ・バロメッツという名前の伝説の植物だ。実の中の子羊は木のまわりの草を食べて育ち、やがてまわりに草がなくなると飢えて木と共に死ぬ。この羊は蹄まで羊毛になっているので無駄なところがなく、その肉はカニの味がするらしい」
「なンでヒツジなのにカニの味がすんの……?」
「そこまでは知らないよ。当時の人間達に会うことがあったら直接訊いてくれ」
「ってゆーかそのチシキって一体どこで何の役に立つの?! ワケのわかんない木の名前まで覚えて!」
posted by 樋川春樹 at 02:50| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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