2011年07月31日

『病院』

 何十万回この病院に来たのだろうか
 百万回には届いていないと思うのだけれど
 もはや数えていられる回数でもないのでわからない

 時間が無限にあるということは
 無限回数の試行が可能ということ
 心が折れさえしなければ

 『運命』を変えられるポイント
 たった一点を見つけ出すために
 普通の人間何人分の人生を費やしただろう

 失敗の数と同じ回数赤ん坊は死んだ
 その全ての死を発狂もせず見送った

 執着する理由はわからない
 単に認めたくなかっただけなのかもしれない
 変えられないものがある、ということを
 どうにもならない『宿命』に囚われた人間がいる、ということを

 正気を保っていられたのは
 自分が既にひとでない証だろうか
 飽かず倦まず挑み続けたのだ
 必ずあるはずの、救済という名の正解を求めて

 『その時刻』を通過したことが
 最初は信じられなくて
 何度も時計を見直して
 何度見直しても時計の針はその一点を通過していて
 思い違いではなくて見間違いでもなくて

 確かに生きて動いている赤ん坊を見下ろして
 自分がとうとう『それ』を探り当てたことを知って



 赤ん坊はその後平穏無事な数十年の時間を生き老人となった
 もう彼に対して『引き金』を使う必要はない
 最後に一度だけ彼に会いに行った
 じきに充実した生涯を終える彼の姿を
 何となくもう一度だけ見てみたくなって
posted by 樋川春樹 at 22:26| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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