2013年06月12日

【指令】第32週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『乱闘』
『べっとり』
『キャラメル』

・期限は2013年6月19日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年6月17日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 18:49| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"話題"

ちょっと話があるんだけど

この切り出し方で始まると背筋が冷える
また何かしただろうかとドキドキする

だいたいしょうもない話題なんだけど
ときどき深刻な話になるから

そうなったら、とりあえず
相手の話はさえぎらず
うんうん、と聞いて
誠心誠意、真摯なフリをして謝る
本当にそう思ってるの?!なんて
言われた日にはキレそうになるけど
ぐっと下腹に力をこめて耐える

たまに我慢までして
一緒にいたいかと思うときもあるけど
何でか自分から迷いなく
「一緒にいたい」との返答があるので
ならしょうがないと諦めてる

惚れてるっていうと何か違う気がする
一緒に話してて楽しいとか
一緒にいて心が安らぐとか
良いとだめな境界が似てるとか
そんな打算的な感じで

うーん、やっぱ惚れてんのかな

良かった、今日はしょうもない話題だ
ほっとしてたら、聞いてる?と
慌ててうなづいて、話し出す

この時間、うん、悪くないな
posted by 華涼紗乃 at 18:43| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"出発"

今日も夕焼けを見ながら考える
ここに留まっていていいのかと

何も不自由はしていない
仲間たちとは気が合うし
心配になるほど働き者のアイツがいるおかげで
毎日がとてもとても快適だ

だけど平穏すぎて変化がない
このいいところ過ぎるココを
普通に出て行った仲間もたくさんいる
だから何度もココから出て行こうした

だけど涙を浮かべて
旅立ちを応援しようとしてくれる
あいつの顔を見ると
なんだかんだ理由をつけて出て行けない

たまに遠出して聞こえてくる話によると
最近は本当にこんな快適なところは
珍しいくらいらしいから

アイツがあんまり働き者でなくなって
だんだんとここから離れていく日が来るだろう

そのときにこっそりと内緒で
ここを出て行けばいいかと最近思う

バタバタと後ろから
駆け寄ってくる音がする
頼んだ仕事をもうやってくれたみたいだ

報告するときの笑顔を見ると
見守らなくちゃなと思う

出発はまだまだ先になりそうだ
posted by 華涼紗乃 at 18:43| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"カード"

板チョコのひとかけらのような
小さくて薄く黒いカード

この中には膨大な個人情報が詰め込まれている
電子の海に流してしまえば
破滅する人間は後を絶たない

こんな指でつまめるほどのものに
人生狂わされるなんて
納得がいかないけれど、そんなものだ

所詮、人を取り巻くのは情報でしかない
様々な感覚器で情報を感知し
それによって生きているだけだ
その情報は簡単に小さく
まとめてしまえる世の中になってしまった

図書館の片隅で
弁当箱サイズのノートブックにカードを差込んだ
キーボードをカタタタタン
情報は電子の海に流れていく

簡単、簡単
世界を掌握するのも
人類を滅亡させるのも
多分、今は、こんな感じで
最後は一瞬で決まるのだ

そこここで、早速小さく悲鳴が上がりはじめた
ここは図書館なのに
静かにしないとダメなのになぁ
posted by 華涼紗乃 at 18:42| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第32週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『迷走』
『透視』
『システム』


・期限は2013年6月19日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年6月17日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 02:25| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『サークル』

 三つ子の魂百まで、とはよく言ったもの。
 幼稚園に入るか入らないかの頃から始まったオカルト好きは留まるところを知らず加速。
 小中高を他人には理解され難い趣味と共に乗り越えた私は、大学に入ってからも『都市伝説同好会』なる怪しげなサークルに籍を置き、家族や友人達を絶賛呆れさせている。
 小さな頃の私の胸を躍らせた、ネッシーもミステリーサークルも妖精写真も、人為的なトリックであると解明されてしまったけれども。
 世の中にはまだまだ科学では説明のつかない不思議なことが大量に存在する。
 百の内の九十九がインチキや勘違いであっても構わない、たった一つでも本当に本物の超常現象があるのならば、私は一生に一度でいいからそれを目撃してみたい。
 自分でもわけのわからない情熱につき動かされ、数多の心霊スポットを訪ね歩き自己責任系の怪談を読み漁り、ときとしてリアルな危険に身を晒しながらも怪異を不思議を求め続けたけれど、望んだものは手に入らない、入る気配もない。
 そんな私が今日やって来たのはとある駅、南口の東側、『故障中』の貼り紙がされた青い扉のコインロッカー。噂によるとこの扉の向こう側には、一生に一度だけその人の運命を変えられるモノが隠されているらしいのだけれど……。

「……なんか心苦しいけど、ああいう知的に前向きで楽観的なタイプはパスしよう。面白そうではあるけれど、一度存在を知られたが最後延々とつきまとわれそうな気がするから」
「あーいうタイプが『枠』の外に出たらどういう存在になるんだろうなあ。あのテンションのまま無限を生きたりするのかねえ?」
「自分自身がある意味怪奇現象になっちゃうワケだから、嬉しいのかそうでもないのか……わからないけど、とにかく面倒くさそうなのは確かだと思う」
「じゃあアレはパスということで。よその街から電車乗り継いで来てんのに気の毒なコトだなぁ」
「かわいそうだけどねぇ」
posted by 樋川春樹 at 02:22| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『すでに』

 強くならなければ。と思う度、今はまだ弱い自分が強く認識されて、胸の奥がぎゅッと痛くなる。
 ヒトではない彼らと一緒にいるのだから、自分もヒトではなくなるべきだ。いや、自分など最初からヒトでなければ良かったのだ。
 そうすれば、他人に迷惑をかけずに済んだ。自分が傷つくことも、きっとなかったのに。彼らだって、悲しまなくても良かったはずなのだ。
 もはやどうにも出来ないしどうにもならない、完全に完了してしまった事柄について、またも出口のない思考を巡らせてしまっていることに気づいて、激しく頭を振る。
 すでに起こってしまったことに対して思い悩んだり悲しんだり苦しんだりする必要は微塵もないのだと、彼らは自分に繰り返し言ってくれる。
 キミはもう十分なだけの傷を負って、過剰なほどの痛みに耐えた。キミはもう泣かなくていいし、怖がらなくてもいい。次は世界が報いを受ける番なのだから。
 ───ああ、やはり、そもそもはじめから、自分はヒトとして生まれてくるべきではなかったのかもしれない。頭に浮かぶ全ての論理が著しく混乱していて、収拾がつけられない。
 不自然に途切れて捻れた、辻褄の合わない入れ子になった過去と未来の記憶。赦され護られることしか知らない、自身のいびつなあり方。彼らが差し出す救いの手を取った、自分がそのとき抱いたのは、安堵ではなく怨嗟の感情だったのではないかと。忠実極まりない人形達が与えてくれたのは、救済ではなく復讐の手段だったのではないかと。
 強くならなければ、強くならなければ。割れるようにアタマが痛い。細くて柔らかな自分の髪の毛をぐしゃりと握りしめる。強くならなければ、
 ───強く在らなければ。

 気に病まなくとも、わざわざ願わなくとも、自分はすでにヒトではないのかもしれない。
 きっとそうなのだろうと思う。
posted by 樋川春樹 at 02:22| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『革靴』

 ひっくり返った車体の下から、革靴と黒いズボンを履いた片足がのぞいていたから、無造作に掴んで引っ張り出してみた。特に助けてやろうという気持ちもなくほとんど無意識の行動だったけれど、存外に軽い手ごたえに少しだけ驚いた、靴を履いたままのその足は膝から上が存在しなかった。焼け焦げた切断面に視線をやる。黒いズボンが少しだけとは言え焼け残ったのは実に不思議なことだ。

 もはやただの物体に過ぎない人体の一部を地面に放り出して、周囲をぐるりと見渡す。数箇所から空に向かって薄く立ちのぼる煙と未だ消えずにしつこく建築物を焦がし続けている炎の他には、視界いっぱいどこにも動くモノの姿は見当たらない。つい先刻念を入れて確認したばかりなのだけれどそれでも、絶対に見落としがないようにと改めて注意深く見える範囲の全てをチェックする。崩壊した都市、散乱する死体の切れ端、飛び散った血液と肉片、原型を留めない機械の破片、炎、煙、濃厚に漂う死と喪失の気配、どっちを向いてもそこにあるのは紛れもない、『枠』の終焉の姿。それぞれにディテールの違いこそあれもう十分に見慣れた光景だ。

 自分達は忠実に任務を遂行しているのだ、と思う。それなのに、ときどき自分達が本当は何をするべきなのか、ほんの少しだけあやふやになる。自分達がどれだけの成果を挙げても、それを褒めてくれるときあのひとはいつもどこか悲しそうにしているから。だから他に何か出来ることがあるんじゃないか、なんて考えが脳裏をよぎってしまう。
posted by 樋川春樹 at 02:21| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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