2013年04月24日

【指令】第25週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『細工』
『さっと』
『ファンデーション』

・期限は2013年5月1日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月29日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 19:28| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"キーホルダー"

これは中学の修学旅行のお土産
自分用に買ったもの
キャラクターとイニシャルを象った
鍵の形のキーホルダー

すっしりとした重みと凹凸が
宝箱の鍵のようで
かっこよくて買ったのだ

うちの鍵をつけていたから
いつも身に着けていた
一度落としてしまったけれど
ちゃんと戻ってきたし
何だかんだずっと一緒にいる

もうだいぶ傷だらけになったけど
それがとても手になじんでいい風合い
ますます気に入っていた

やがて私が結婚することになり
イニシャルが変わった
別に気にせずそのまま使うつもりでいたのだけど
引越しの最中になくなってしまった

不思議なことに
がっちりとつけていた家の鍵はそのままで
キーホルダーだけ消えていた

何だか切なくて悲しくなった
新たなる旅立ちに別れはつきものだけど

もう少しそばにいて欲しかったなと思う

posted by 華涼紗乃 at 19:17| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"濁点"

朝起きてからキリキリと胃が痛む
休もうかと思ったけどそうはいかない
時間ギリギリで駆け込んだ電車
一瞬だけ注目を集めて恥ずかしい

今日は来ないかと思った!
駆け込んできた王子さま
キラキラの瞳のあなたに恋をしてしまったの
最近ギラギラしてるねって言われるけど気にしないわ
一直線に行かなくちゃ!

げっ!あの子スカートの端めくれてるんじゃ?!
見えはしないけどハラハラする短さだ
他にも気づいてる人はいるけど言えないよな
カバンの中身をバラバラとぶちまけて
座って拾ってもらえばスカート元に戻るかな?

あ、あれ?カバンひっくり返しちゃった!
私の足元にもいくつか転がってきた
お、落ち着いて、たんたんと拾わなきゃ
拾ったら渡さなきゃよね
だんだんあなたが近づいてくる、きゃー!

ちゃんとスカート戻ったわ、良かった
若者よくやった!
最初から最後まで
離れたとこで見てたけど面白かったわ
若い人は良いわね、ほのぼのするわ
posted by 華涼紗乃 at 19:16| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"名無し"

無責任な発言はそれだけで面白い
面と向かっては決して言えない言葉
さまざまな差別用語、誹謗中傷
極端から極端へ走る思考

心の中にしまっていた
ある種凶暴な考えの端っこを
ちらりと見せてみたら
案外同じ人間がいると気づく

仲間がいるんだ
こんなこと考えてるの自分だけかと思った
考えちゃいけないんだと思った
でもそんなことないんだ
良かった、堂々と発言できるよ
ほら皆、賛同してくれる

そのエネルギーは凝縮し膨張し他を圧迫する
良心まで侵されたらそこには

「ソウカ、ボクハ正シカッタンダ」

踊らされてはいけない、ここは仮想の世界だ
現実とは切り離された世界

すべてが嘘、夢、偽り、幻想

名無しで語れることなんて
その程度しかないんだから
posted by 華涼紗乃 at 19:15| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第25週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『署名』
『年上』
『デッドスペース』


・期限は2013年5月1日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月29日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 02:05| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ガイド』

 道路の一角に、うず高く花束や果物や、お菓子が積み上げられている場所がある
 祈りの言葉を繰り返した手書きのメッセージ
 かつてこの場所でたいへんな悲劇が起きて、大勢の人が犠牲になったのだと、
 その事件が起きたときにはまだ学生だったと思われる若いガイドが解説を始める

 人々の悲しみは今も癒えず、怒りも憤りも薄れることはなく、
 その場所には何年も経った今でも新しい花が手向けられる

 他者を傷つけ殺めた時点で彼らの正義はいかなる意味においても失われた
 『枠』の内側にいる限りはそのやり方は絶対に受け容れられない
 外側から世界を巻き戻し続ける自分よりも彼らの方が真剣に世界のことを考えていたとしても
 牢につながれ糾弾されているのは彼らで
 安穏な空の下で平和に観光旅行などしているのは自分の方で
posted by 樋川春樹 at 02:03| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『たわわに』

 たとえば。

 たわわに実った果実は生命感に溢れ、生きるよろこびのようなものすら見る者に感じさせるけれど。
 果実が実るのは何も生を肯定するためではなく、鳥や獣をひきつけて実の内部の種子を運搬させるためだ。
 新しい生のために、一度死ぬことを期待して、果実は実る。
 ずっしりと重い実で枝をしならせて、複数の死と引き換えにもっとたくさんの生命をばら撒くために、空に向かって果実を差し出すのだ。
 実をつける植物だけではない、他の生き物達もみんな、そんな風にして生命をつないできた。個体の死と引き換えに、種全体を生き長らえさせてきた。

 それで何かが、正当化されるわけではないけれど。

 不幸になるのがわかっているのに幸福になりたがる、
 底無し沼の真ん中でもがく人間達が、
 波紋のように不幸をひろげてゆく。
 不幸であるからこそ人間達はいっそう足掻き、
 より大きな波に周囲の全てを巻き込んでゆく。

 幸福な状態が正しいのだと、人間はそう思いたがっているだけなのかもしれない。
 いまの自分達の状態は間違いで、本当はもっと正しい状態があって。
 努力すれば、努力し続ければ、正しいところへ行き着けるのだと。
 そう考えて、何も掴めない弱いてのひらをあてもなく高みへ、伸ばすのかもしれない。
posted by 樋川春樹 at 02:02| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『後先』

 ───ああ、『枠』の中では。
 今日も明日も非道いことばかりが起きる。

 人間は何故、都合の良い誤解をするのだろう。
 どうしようもなく非力で絶望的に脆弱なその手で、
 世界の何かを変えられるなんて思ったりするんだろう。
 弱々しくてちっぽけで、限りある時間を生きることしか出来ない、
 無力で無価値で身の程知らずな人間達は。

 何度同じあやまちを繰り返してもいっこうに学ぶ気配すらなく、
 いまこの瞬間も世界のどこかで負の感情を連鎖させている。

 生きとし生けるモノ達が憎み合い殺し合う世界であるのなら、
 『虚ろ』に喰われてしまった方がまだしも幸福なのかもしれない。
 そもそもが時間の果てにおいては『竜』に喰われるさだめのものだ。
 その『枠』の中で流される、血にも涙にも、きっと意味など何もない。

 だから後先考えずに世界の全部を敵に回した彼らのしたことも、
 彼らが正義とみなす惨劇の犠牲となった人々の痛みも苦しみも悲しみも何もかもが、
 どうしようもなく、どうしようもなく無駄だったのだ。

 不可視の『引き金』を強く握りしめて、それなのに可能性を探る。
 何千回、何万回ものリトライの末に、彼らがしあわせになる未来もそれはあるだろうが、
 それとまったく同じ確率で、彼らがそうしたかったようにほんとうに世界を変えるという選択肢も、
 厳然として存在するのに違いない。
 大量の血が流れて、多数の人命が失われて、それでも『枠』の外側から見る限りでは、
 そのどちらの結末を世界が望んでいるのか、容易には判断がつかないのだ。
posted by 樋川春樹 at 02:01| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月17日

【指令】第24週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『後先』
『たわわに』
『ガイド』

・期限は2013年4月24日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月22日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 18:29| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"たい焼き"

彼にたい焼きを買っていってあげた
大好物だからだ

家に帰って渡してあげるとお礼を言って
満面の笑みでお茶をいれ
獣のようにむしゃむしゃと喰らいつき
一瞬目を話した隙にもうなくなっていた

そこでようやく気づく
あれ?自分の分は買ってこなかったの?
遅い、遅すぎる

食べれないこし餡のしかなかったからと答えると
あー、なるほどと納得
…それで終わりだ

おやつに関して彼はジャイアンである
"俺のものは俺のもの"
絶対にひとかけらも自分から私にくれたことはない
"お前のものは俺のもの"
私が何か食べてるとじいっと見て
私が視線に気づくと大口を開ける

まあ、いい
幸いダイエット中だから
おやつは大敵である
しかし気が利かないのはどうだろうか!

誰かが食べてるのと見てしまうと食べたくなる
食べれないとなるとイライラはする

冷蔵庫を開ける音がした
まだ食べるつもりなのか!

さらにイラついて座ってると
目の前に何か出てきた

彼がスプーンとともに差し出したのは
0カロリーのゼリー

買っておいたよ、一緒に食べよう
…お前も食べるのかよっ!
ちょっと優しいじゃないかと思った気分を
posted by 華涼紗乃 at 18:25| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"点滅"

生死がコントロールできれば良いのにと思う
生きたい人は生きればいい
生きたくない人は生きなくて良い

生きていたって何も生み出さない者
生きる意味を見出せない者
死ねないから生きてるだけの者
存在するだけで害になる者

人間の命は平等だとかいうけれど
それは悪い意味で的を射ている
「命は大事にしないといけない
 死ぬなんて許されない」
そういう扱い方をされることにおいては平等

苦しまずに痛みなしに死ねるのなら
それをためらいもなく選ぶ人は
たくさんいるだろうにな

そして生きたいと願う人が
少しでも生きやすくなれば
それが一番なのにな

何でこう何の法則もなく
無関係に命は存在するのだろうな

このままだと多分
全部だめになってしまいそうな
そんな気がするのに

音もなくゆっくりと
暗闇の中でふわりふわり
赤い光が点滅している

鼓動のしるし?
それとも警告のしるし?
posted by 華涼紗乃 at 18:25| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"三角関係"

「俺も同じうちに住みたい!
 あの子のことを愛してるんだ!
 隣だけど、すぐ隣だけど!
 声も姿も見えるけどそばに寄れない!
 何よりあいつが何で同じうちなんだよ!
 おいどーにかしろ!」

「また騒いでるわ、煩いったらないわね
 まったく子どもで嫌になっちゃう
 その点あなたは落ち着きがあってオトナで
 すごくかっこいい
 いつもつれないけれど、そこが良いの
 ツンデレっていうのかしら…!
 照れてるだけなのよね、うふふ」

「…あー、煩い
 まったく騒がしくてたまらん
 あいつよりは静かだから
 こいつと一緒にいるけど
 いっそあいつと俺を入れ替えれば
 静かになるんじゃないだろうか…」

ん?どうしたの?
うちのインコたちじっと見つめて…
あーもう、静かにしなさい!
そんなに騒ぐならもう一緒に遊ばせてあげないわよ!

…いや、言葉がしゃべれなくても
何となくわかるもんだな、言いたいことは
人間と同じなんだな、わりと
全然違う生き物なのに不思議だな…

何、悟ったようにうなづいてるんだか
当たり前のことでしょ

そうか?

だって生き物はあまねく恋をするでしょう?
posted by 華涼紗乃 at 18:24| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月16日

【指令】第24週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『名無し』
『濁点』
『キーホルダー』


・期限は2013年4月24日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月22日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 00:16| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『キッチン』

 キッチン、という単語から連想するのは、父親の背中、そして父親の死、だ。

 ひょろりと細い身体の背中を少し丸めるようにして、よれよれになったエプロンを着けて、私のために食事をつくってくれている、父親の姿が思い出される。
 と同時に、冷えた床に身を投げ出すようにして、動かなくなっていた彼の姿も脳裏に浮かんでくる。

 私の父親は気が弱くてお人好しで、周囲から面倒な仕事を押しつけられてばかりいた。頼まれると断れなくて、困ってる人を見ると放っておけなくて。自分がしなくても良いような仕事ばかりを大量に抱え込んで、残業続きの毎日だった。
 子どもが生まれたばかりだというのに家で我が子とふれあう時間もとれず、生まれたばかりの子どもと二人きりで家に閉じこもっているしかない妻をフォローする時間もとれず。

 やがて精神的に追い詰められた母親は、他人にいいように使われてばかりの父親と泣きわめいてばかりで手のかかる赤ん坊とに愛想を尽かして、姿を消してしまった。
 彼女が何を考えてそうしたのか、その後どこへ行ってしまったのか、未だに誰にもわからずにいる。

 妻に逃げられた夫は、たった一人で子どもを育てなければならなくなった。
 育児の時間を捻出するため職を替え、収入減を補うために住居を替えた。
 父親は本当に一生懸命、それこそ全身全霊を賭けて、私のことを育ててくれた。
 自分のことは全部後回しにして、唯一の家族である私が不自由な想いをしないように、いつだって気遣ってくれた。

 毎日あたたかい食事を用意してくれた。
 彩り豊かで凝ったお弁当も持たせてくれた。
 学校の勉強もみてくれたし、長期休暇のたびに遊びにも連れ出してくれた。
 絵に描いたような理想の父親だった。
 私にはそれがずいぶん自慢だったものだ。

 けれど父親は改めて言うまでもなく絵に描いたものではなく生身の存在だったから。
 自らをまるで省みない過剰な優しさの果てに、私が高校最後の授業を終えて帰って来たその日、キッチンの床に倒れて、つめたくなっていた。

 テーブルの上に置かれたスーパーの袋から、たまねぎとじゃがいもがこぼれ落ちて、父親の顔のすぐそばに転がっていた。
 その夜の献立は、私の大好きなカレーライスにするつもりだったようだ。

 母親が家を出たのは、自分の情けなさが原因だ。
 一度も言葉にはしなかったけれど、父さんはきっとずっとそう考えていたのだと思う。
 自分の不甲斐なさのせいで母親を失ったこの子に、だからもう決してつらい想いをさせてはいけない。
 父さんのことだからずっとずっとそう思っていたのだろう。

 それは間違っている、と言いたかったけれど。
 彼がそう思っていたからこそ、私はしあわせに育てられたのだし。
 それを正しい、と認めるとするならば。
 彼の人生はあまりにも、他人のためのもの過ぎて。
posted by 樋川春樹 at 00:13| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『もっとも』

 『マスター』を行動不能にすれば、『狩人』達は動きを止める。
 『木偶』はそのことを、大昔から知っている。

 『木偶』は自分達の仲間がどれほど壊されようとも意に介さないし、極端な話自分達の目的−『枠』の内部を虚ろで喰い荒らし世界をひとつまるごと駄目にする行為−を何度妨害されようとも、そのことを特別問題視したりもしない。
 自分達が目的を果たせなくとも良い、とまでは思っていないようだけれど。
 『木偶』はどこにでも出現するし、どこででも増殖する。ある『枠』で『狩人』やそれに準ずる存在に殲滅させられたなら、またどこか他の『枠』において飽かず倦まず同じことをするだけだ。

 それなのに『木偶』は稀に自分達が持っている浅い知恵を駆使して、『狩人』の動きを根本から停止させるべく『マスター』を狙うような真似を仕掛けてくる。
 その作戦は『木偶』達の中から自然発生的に生まれるものなのか、あるいはもしかして連中の中にも司令官的な役割を担うものがいて、そいつが気まぐれに考え出すものなのか、こちらとしては知る術もない。

 いずれにしても所詮は浅すぎる知恵だ。その作戦は大昔に一度失敗しているし───今回だって、成功するわけがない。

 一日のうちでも短い間しかない、『マスター』がひとりきりの時間を襲撃されようとも。

 ───『絵描き』は世界を直接描き変える絵筆をとる。

 ボク達のうちの誰かが必ず、ずっと彼女のそばにいるのは、そんな風にして何時如何なるときでも『マスター』を守る必要があるから、『じゃない』。

 ───選んだ色は『赤』、あざやかに力強い、炎の色。

 ただボク達が『マスター』のことをどうしようもなく慕っていて、片時もあのひとのそばを離れたくないと思っているから、本当はただそれだけのこと。

 ───ただの一閃、空間を薙いだ紅は、次の瞬間爆発的な火力となって襲撃者を吹き飛ばす。

 もっとも、心優しい『マスター』は本当に心底争いごとが苦手で嫌いで、相手が『木偶』とは言え自分の能力の攻撃的な側面を発揮するような事態になんて、ならないに越したことはないと考えているのだけれど。

 ───あとには何も残らない。残骸はおろか、灰の一粒、わずかな影すらも、『赤』は焼き滅ぼしてしまった。
posted by 樋川春樹 at 00:12| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『靴下』

 近頃は「なるべく人目に立たないように」どころか「おマエのセンスは独創的過ぎるからもう自分の判断でコーディネートするな」なんて言われるようになった。
 ヒトのファッションセンスをどうこう言う前に自分がもうちょっと流行りのカッコをするように気をつけてみたらいいのに、そもそも「誰にも目撃されない」ことを前提に行動してるときにはどんな服を着ていたっておいらのジユウってヤツじゃないの?
 奇抜な服装をしている程度で目立って見つかりやすくなるような中途半端な隠密行動はしてないつもり。動きやすければいいと思う。どうせならテンション上がるようなファッションの方がいいじゃないか。
 なんて主張、してみたところで聞き入れてはもらえない。ファッション雑誌にあふれてるような、街のどこででも見かけるような服を着てれば、うるさくお説教されることはないんだけど、それって全然つまんないよね。
 だから最近は、こっそり靴下だけ左右柄が違うのを履いてみたり、スニーカーの靴紐を左右色違いにしてみたりするようになった。
 ヘアスタイルやアクセサリーにまでばっちり気合いを入れてても、足もとがお留守になってる奴ってまだまだ結構多い。それってファッションに興味ないような連中はなおさら靴下とか靴とかなんて見ないってコトだもんね。
 おかげでちょっとしたお洒落を楽しめるようになった。もしもこれがバレたら、不必要なお洒落になんか意地になって取り組むのは理解出来ないとか言われちゃうのかな。
 人間になりたいわけじゃないのに、人間と同じようなことをしたいと思ってしまうのは何故なんだろう。人間のやり方を真似して人間の考え方をなぞる。絶対に同じものにはなれないし、なりたくもないのに、何の役にも立たないもろもろを追いかけているときが、楽しいと感じるんだ。
posted by 樋川春樹 at 00:12| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月10日

【指令】第23週:樋川→華涼

++++


ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『三角関係』
『点滅』
『たい焼き』


・期限は2013年4月17日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月15日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


++++
posted by 樋川春樹 at 23:48| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『フェニックス』

 違う道を歩いていても
 見上げる空はひとつだと

 信じていたから

 不幸になったのだ

 交わらない道をずっと歩いていたのに
 それでも同じ空の下にいると思っていた
 何故そんな風に思っていたのだろう?
 ただ、認めたくなかっただけだ

 違う空の下でたったひとり
 永遠に孤独でいなければならない自分自身を
 認めたくなかった、ただそれだけのために───

 どうしてもわかりあえないものがある
 想像や推測で補えないものがある
 たとえこの世にある全ての書物に目を通し
 あらゆる物事を記憶し分析出来るようになったとしても
 絶対に、絶対に届かないもの

 見上げる空も別のものだと
 割り切れていたなら楽になれただろうか
 自分に備わったもの、何ひとつとして
 周囲と同じではないのだと、本当に思い知れていたなら
 無様にしがみついて
 迷惑をかけずに済んだのだろうか

 いまさら、どれだけ考えを巡らせても、仕方のないことだ

 炎が建物全体に回るまでの時間は
 予想よりも少しだけ短かった
 願わくばこの炎が全てを
 正しかったことも間違っていたことも、
 何もかも綺麗に焼き尽くしてくれますように

 自らの死期を悟り、炎の中に身を投げる不死鳥のように
 幾度もの死を経て何度でもよみがえるフェニックスのように

 人間はそんな風にはなれないとわかっているけれど
 それでも

 肺を焼く熱の中へと

 ゆっくりと進み出る
posted by 樋川春樹 at 23:47| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『どっちみち』

 良い人間であろうとしていた

 誰に対しても親切でいつも笑顔だったわけじゃないけれど

 少なくとも悪い人間になることだけは避けたいと

 まわりの人達を傷つけないように

 弱い人達に優しく出来るように

 みずからの良心に恥じないように

 一生懸命自分のふるまいを制御してきたつもりだった

 きっとそうやっていっときの油断もなく
 コントロールし続けなければ良い人間たり得ない自分自身が

 最初からどうしようもなく答えを示していた

 自分のつくり出した規律
 わかりやすいそのルールにただ盲目的に沿っていただけ
 何故、何のためにそれをするのか
 本当のところは結局、わかっていなかった

 傷つけたくなかったけれど
 同じくらい、傷つきたくもなかった

 身を守りたかっただけで
 その一心で

 どっちみちこんな結末に辿り着いてしまうのだと知っていれば
 あんなに苦しんでいなくて済んだのに

 自分をおさえつけて、否定し続けて
 陰鬱な日々を送る必要もなかったのに
posted by 樋川春樹 at 23:46| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『消毒』

 頭の良い子だとほめられて育った

 ききわけなく泣きわめくこともなく
 年下の子をいじめたりもせず
 友達とケンカをしたりもせず

 実に手のかからない子だった

 どのように振る舞えばおとなが喜ぶか知っていただけだ

 感情でぶつかることのない人生だった

 幾通りもの展開を周到に想定した理論は感情の代用となり得る
 先日読んだ小説にそういう殺人鬼の話が載っていたよ
 他人に共感することが理解出来ない男の話

 まるで自分のことのようだった

 誰かが怪我をしたとき
 真っ先に救急箱から消毒液を取り出すような人間だった
 清潔な包帯とガーゼ、ばんそうこう
 でも多分、最初に触れるべきはそれらではなく
 傷を負って不安な思いをしている誰かの背中ではなかったかと───
posted by 樋川春樹 at 23:46| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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