2013年03月06日

【指令】第18週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『搾取』
『ほのぼの』
『フロア』

・期限は2013年3月13日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月11日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 18:35| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"りんご"

世界は辛いことばかりだ

雲ひとつない青空で
風もなくてポカポカ陽気で
小鳥がピヨピヨさえずっていて

そんな平和な中にいても
僕はベンチに座って
頭を抱えてため息をつくことしか出来ない

真っ暗な映画館に閉じ込められた僕の脳は
ついに暗黒の内なる世界への
螺旋階段を降り始めたらしい

何にも良いことなんかないのに

ふいに太陽の光を反射して何かが光った
宙に投げられた丸くて紅い実

金髪のくるくる巻き毛の
嘘だろう?と思うぐらいオーソドックスな天使が
白い服を着た胸の辺りで
大きなその実をきゅっきゅと拭いて
僕に投げてよこした

思わず受け取った
顔を上げたらもう天使はいなかった

手の中にはずっしりと重く中身の詰まった林檎
つやつやとキラキラと輝く
皮をむくことさえもったいない
その芳しい香りに僕の脳でさえ反応した

恐る恐るかぶりつく

カプッと音がした
口の中に広がる甘酸っぱい果汁
シャキシャキとした歯ごたえ

電気信号が神経を伝っていく
こんな単純で些細なことで脳が喜んでる

複雑な刺激に慣れすぎていただけだ
まだまだ世界は光に満ちている

あの天使は僕たちに
忘れ去られた智恵の実を運んでいるのかもしれない

posted by 華涼紗乃 at 18:30| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"中古品"

古本屋めぐりが大好きな私に
潔癖症の友達は
よくそんな誰が触ったかわからないもの
お金出してまで買うわねという

そう言ったら
新品の本だって
その紙が生まれた瞬間に
あなたが初めて触れたわけではないでしょう?
といつも返すことにしている

紙が手にしっくりとなじむ感じは
何にも変えがたいものがある
切れそうな新品も良いけれど
熟成を重ねて色も深くなって
角も丸くなって心地いい

そういうと友達はワインみたいに言うのねという

あんな出来てから何年も経ってるお酒
腐ってそうで飲むの嫌だよと
私が言ってるからだろうか

結局は相容れないけれど
ま、雰囲気はお互い伝わってはいる

でも、友達は言う
ワインは中古とかないから!!

…栓を開けないまま個人間で
売り買いされてると聞くけど
それは中古品ではないのだろうか

posted by 華涼紗乃 at 18:29| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"美術館"

芸術なんか露ほどもわからないけれど
絵というものは圧倒的な力があると思う

でもそれはその物限定だ
どこかに印刷されたものや
転載されているものじゃいけない

そこにはその作品が纏うすべてがある
思わず手を伸ばせば
中に入っていけそうな圧倒的な存在感
額縁が窓枠に見えることさえある

絵の具に混ぜ込んだ魂が
そこに確かに存在しているのだろう

だから
何も知らないけれど
高尚なことなど何も言えないけど

その絵の前でふと足を止め
じっと見入ってしまうだけで
もうそれは琴線に触れてしまっている

敷居なんて高くない
その感動を味わいに美術館へ

出来るなら
隣に同じ感動を味わえる誰かがいれば
なお良いのだけれど
posted by 華涼紗乃 at 18:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第18週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『認証』
『トースト』
『乱雑』


・期限は2013年3月13日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月11日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 02:00| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『トランプ』

 際限なく非道いことばかりが起こり続ける『枠』の中で、「そこから出られない」そのためだけに圧倒的多数の人間達が今日も不幸になり続けている。

 とは言え、生まれてきた誰もが『枠』から出られるようになるワケではないし、それは嘆いたり憂いたりするだけ無駄な現象なのかもしれない。

 『枠』から出ることを許されない圧倒的多数の人間達は、大人しくテーブルについて配られるカードを待つことしか出来ない存在。
 偶然か必然か、とにかく手元に回されて来た札を使って、人生というゲームを切り抜けなければならない。
 素晴らしい組み合わせの札が与えられることなどほとんどないけれど、何の役もつくれないカードが回って来たとしても、配り直しを要求することは出来ない。

 手札がつくる役は各人の運命、それはトランプの全てのカードを用いた組み合わせの数よりも遥かに多くのパターンが用意されているけれど、所詮は配られた札が示す決められた運命、誰しもを幸福へと導くワケじゃない。

 『枠』から出ることが出来た少数の中でもひと握りのわずかな人間だけが、カードを配りなおす権限を与えられ、その力を手に入れることが出来る。
 あらゆるものごとがどんどん悪くなってゆく『枠』の中で、それでも少しでも良い結末を迎えられるルートを、歩み直させることが出来る。

 一度配られたカードを回収して。
 もう一度シャッフルする。
 「その他の膨大な数のゲームに影響を与えながら」。
posted by 樋川春樹 at 01:53| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『つんつん』

 出来るだけ、出来るだけ長い棒状のものを探し出してきた。
 限界までいっぱいに腕を伸ばして、握れなくなる寸前の先端を持って、可能な限り身体を離して、おそるおそる慎重に、ソレをつついてみる。

 つんつん、と。

 呼吸を止めて、瞬きも忘れて、反応を待つ。
 数秒経っても。
 数十秒経っても。
 ソレはもう、動かない。
 死んだのだ。

 ああ、そうだ、ソレはもう、死んだのだ。

 暗い廊下にしゃがみ込んだまま、数m先に倒れているソレから視線を剥がせないまま。
 奇妙な静寂に閉ざされていると言うのに世界はグラグラと不定形に揺れていて。
 狭窄した視野の中からは色彩も質感も抜け落ちてゆく。
 ぞっとするほど薄っぺらになった何もかもの真ん中で、ソレはもう動かない。

 ついさっきまで、鬼のような形相で自分を怒鳴りつけていたもの。

 その両手で顔を身体を激しく叩いてきたもの。
 その両足で腹を背中を激しく蹴ってきたもの。
 その指は髪を掴んで頭を壁に打ちつけた。
 その口は考えつく限りの罵詈雑言を浴びせかけてきた。
 その瞳は間違いようもなく憎悪と怒りに満ちていたから。

 だから自分は、断ち切らなければならないと思ったのだ。

 だけど、何故だろう?
 断ち切ってしまいさえすれば、自分はソレから解放されるハズだったのに。
 そう強く信じていたのに。

 もう動くことも大声をあげることもなくなった、自分の存在を脅かすことのなくなったハズのソレが、世界の中心から、消えてくれないのだ。
posted by 樋川春樹 at 01:52| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『絵画』

 小さな頃から、絵を描くことが好きだった。
 ひとり静かに白い紙と向き合って、好きなように色えんぴつやクレヨンで様々なものを描く。
 目の前にあるものだけでなく、絵本やテレビの中で見ただけの風景や、ときどきは自分が想像しただけのものも描いた。
 あの頃、好きという気持ちだけで描いていた絵は多分上手なものではなかっただろうけど、でもきっと下手なものでもなかったハズだと自分では思っている。
 誰にも見せたことがなくて、誰にも評価してもらったことがないから、本当のところはわからない。

 以前ほど頻繁ではなくなったけれど、絵を描くことは今でも続けている。
 時間が出来たときにスケッチブックに色えんぴつを走らせていると、自分の心がおだやかに静まってゆくのがわかる。

 描いた絵を見せると、彼らは皆、口を揃えて素敵な絵だと褒めてくれる。

 ふんわりとした色づかいの、素朴な絵だ、と。
 描き手の心の優しさが、見る者に伝わるような。

 彼らは心から私の絵を賞賛してくれているし、私もそれを疑うつもりまではないのだけれど、それでもちょっとだけ、苦笑したくなる。彼らのほとんどは、私が描いた以外の絵などマトモに見たこともないのに。それなのに、私の絵を褒めてくれるんだ、と。

 絵画はそれを描いた者が見ている世界を切り取ったもの。
 描いた人間が、その人の目で、心で、感じている世界をうつしたとったもの。
 よく言われることだけれど、はたして本当にそうだろうか。
 少なくとも私の場合は、私の描く絵は私が見ている世界ではなくて、私が「見たいと思っている世界」を描いたものだ。

 何物をも刺激したり傷つけたりすることのない淡い色彩で表現された、ふわふわとした静かな世界。
 誰も誰かを攻撃しない、いがみ合うこともない、ただ微笑んでいられる、平和な世界。
 そんなものは何処にもないしこれから何処かにそんなものが生まれることもないのだと、知っていてもなお。
 私はそんな、ぬるま湯よりも甘ったるい世界を夢見ていたし、多分今でもなお、夢見続けている。
posted by 樋川春樹 at 01:52| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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