2013年03月27日

【指令】第21週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『透明感』
『使いまわし』
『報告書』


・期限は2013年4月3日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月1日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 19:38| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『サプリメント』

 異様に勘の鋭い人間というのがたまにはいるもので、彼女はほぼ一目見たその瞬間からボクに不審なものを感じ取ったようだった。一瞬にも満たない短い間目が合った、ただそれだけのことで、激しい敵意と警戒心をあからさまに向けられたんだから、抗議して謝罪してもらおうかと思ったぐらいだ。まあ、変にモメるような事態は避けたかったし目立ってもメリットなんか何にもないから、わざとらしく気づかないふりをしておいてやったけれど。

 せっかく関わらないようにしてやっているのに、彼女はずっとボクをマークし続けた。ここまでの監視を一秒の隙もなく続けられると、残念ながら今日の計画は中止ということにせざるを得なくなる。仕事を中断されないように彼女を排除してしまおうかと、そのことを考えなかったと言えば嘘になるけれど、あの敵愾心の抱きっぷりじゃボクが声をかけたところで他の人がいる中で騒がれるだけで、ただ単に厄介なことになってしまいそうなだけだったから、それもやめておく。

 それじゃあ今日のところは引き上げようかとパーティー会場を抜け出しかけたところで、驚いたことに彼女の方からボクにコンタクトしてきた。同業者なのだろう男性二人をお供にくっつけて。身分証明書を提示しながら、ボクの振る舞いに不審な点があるから所持品のチェックをさせてもらいたいと詰め寄って来る。ボクはまじまじと彼女達のカオを見つめ返してしまう。今日のボクは正真正銘本当に何もしていないと言うのに、一体どういうつもりでコイツらはカバンの中身を見せてみろなんて偉そうな口調で命令してくるのだろう?
 込み上げる苛立ちと嫌悪感にふと衝動的な行動をとってしまいそうになったけれど、かるく深呼吸して自制する。チェックされて困るようなことは何もないのだから、彼女達の好きにさせてやればいい。

 廊下の隅に連れて行かれたボクは、可憐な花が品良く活けられた花瓶が飾られている白いテーブルの上に、持参していたカバンから取り出したものを次々と並べて行った。スマホに財布、交通系ICカードが入った定期入れに読みかけの文庫本、ハンカチとポケットティッシュ、複数の鍵をまとめてあるキーホルダーに折り畳みの傘。あとは眠気覚まし用のガムと、コンビニで売ってる安物のライター、目の疲れを癒すためのブルーベリーエキス入りのサプリメントの袋。
 こちらがちょっと気の毒になってしまうぐらい、無難なモノしか出て来ない。せめてサプリをピルケースにでも入れ替えて正体不明の薬物っぽくしておいてやれば良かったかも。ライターを持っているのにタバコがないのは何故かと、男の一人がヤケになったみたいに細かいところをつついてきたけれど、喫煙者の友人が忘れて行ったものを返すために持ち歩いているだけだと答えるとそれ以上はツッコんで来られない様子だ。どのみち、100円程度で買えそうなライターがカバンの中に入っていたからと言って、それだけで身柄を拘束出来るワケもない。

 それでも彼女はあきらめなかった。自分の職業に余程誇りがあるのだろう、大した使命感だ。そこらのドラッグストアに山と積まれているようなありふれたサプリメントの袋を指さして、その中身を調べたいと言い出した。調べたいと言われても、どうやって? 鑑識に持ち帰って成分分析をすると言うなら、こんなどこでも買えるサプリは袋ごと全部進呈するけど、その結果が出るまでボクは諸君に付き合ったりはしないし、そんな義理もないよ? ボクには次に行かなきゃならないところがあって、時間も結構おしてるからね。そう言うと彼女は、鑑識なんか必要ない、自分が今ここでひとつ口に入れてみる、とボクをまっすぐ睨みつける。

 ひとつ食べてみせろ、じゃなくて、ひとつ食べてみせる、か。向こうもそれなりには考えているようだね。数百人単位の被害者を出して数十人もが命を落とした遊園地での事件のことを、念頭に置いているのかな。大した正義感だと思う。尊敬に値する。ボクはサプリメントの袋を開いて、彼女にお好きな一粒を選ばせてあげた。決死の表情で口に入れる彼女の目の前で、ボクもひょいと一粒食べてみせる。サプリメントなんか気休め程度だけど、仕事柄パソコンに向かう機会が多いからね、目にはそれなりにやさしくしなくちゃ。……で、このブルーベリーエキス入りのサプリメントに、何か『問題点』でも?

 悔しそうな表情の彼女達と別れて歩き出しながら、ボクは彼女達が犯した誤りについて考える。彼女達は何の根拠もなく、『次に使われる毒物も即効性のものだろう』と思い込んでしまったらしい。何故そんなイージーなミスをしてしまったのか、理解に苦しむ。サプリメントの袋を調べた判断は大当たりだったのに、さらに彼女は自らの生命を賭して毒見までしたと言うのに、これじゃあまったくの無駄死にだ。せっかく「成分分析してもらっても構わない」ってアドバイスまでしてやったと言うのに。今回用意した毒は半日ほど後に効果を発揮する遅効性のもの。パーティー会場において他愛もない会話のついでにターゲット達に無害な感じでつまませようと思っていたものに、口に入れた瞬間ぶっ倒れるような激烈な効果をもたらすものを入れるワケにはいかないものね。
 彼女には気の毒だけど、あのサプリメントが毒物だったと証明される頃にはボクはこの『枠』の中にはいない。作戦は他の奴が遂行することになる。この『枠』の中ではこれまで以上に仕事がやりにくくなるのだろうか? まあそれはボクが考えなきゃならないことじゃないか。
posted by 樋川春樹 at 19:35| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『とやかく』

 痛い。
 痛い。
 痛い。

 身体を折り曲げて激しく咳き込む。肋骨が砕けてしまいそうなぐらいの咳。どれほどの時間そうしていただろうか。急に込み上げた吐き気に口を押さえる暇もなく、がはッ、と何かを吐き出した。

 臓物を吐き出してしまったのだろうかと、有り得ない考えが一瞬脳裏を過ぎる。見下ろした床は真っ赤に染まっていた。なんだ。ただの血か。右手で唇を乱暴に拭う。咳が止まっている。

 ぜえぜえと荒い息をつきながら、咳は止まったけれど消えない痛みに呆然と立ち尽くす。どこが痛むのか何が原因なのか、皆目見当がつかない。咳き込んでいたときは身体の内部が痛むような気がしていたけれど、咳がおさまってみればそうではないような気もしてくる。身体の表面にどこか大きな傷が出来ているような。それにしては、先ほど吐いた血の他に血液が流れた様子はないし。

 痛い。
 痛い。

 崩れ落ちて倒れ込んで、あたり憚らぬ大声でわあわあと泣きわめいてしまいたかった。痛い痛い、痛くてたまらないと大騒ぎしながら地面をのた打ち回って、誰かに助けてもらいたかった。慰めてもらいたかった。けれどそれは不可能だ。ここには自分以外に誰もいないから。誰もついて来なくていい、その必要はないと言い切ったのは自分自身だった。自分の好きなようにやれるからその方が良いと思ってのことだ。横からとやかく口出しされるのは何より嫌いだったから、一人で出来ることは一人きりでやる方が良いと思ったのだ。実際、一人で成し遂げられるはずだったのに。

 痛い……。

 目もくらむほどの激痛が全身を責め苛んでいる。さっき吐き出したのが本当に内臓だったら良かった。もしかしたらそれで、この痛みが多少なりともマシになっていたかもしれないから。無論そんなことはないのだろうけど。どこにてのひらを当ててみても患部を押さえられているという実感がなく、どういう体勢をとれば激痛が緩和されるのかもわからないから、仕方なく棒立ちのまま。もう一度血を吐くだろうか。だったら迂闊に横にならない方がいい気がする。立っていた方が吐きやすいし、衣服を汚さずに済むだろう。横たわった状態でさっきみたいな吐き方をしたら、気管に入って酷いことになってしまうかもしれないし。

 一人で来たことに後悔はないけれど、こういうときに誰にも助けてもらえないのは少しだけ不便だとも思う。単独行動はとるなと何度も何度も繰り返されるのは、こういう場合に備えてのことなのだろうと、アタマではわかっていたけれど……一人で自由に動ける魅力を捨てる気にはなれなかった。だからこそ今こうして、しっぺ返しをくらっているのだろうけど。
posted by 樋川春樹 at 19:35| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『開花』

 見て見て、アレだよ、ここでもあの木が咲いてるよ。

 私の手をしっかりと握りしめて半ば引っ張るように歩きながら、弾んだ声をあげた彼が前方にある満開の桜を指し示す。

 あの木ってすごく人気があるんだよね。アレがいつ咲くかって、カイカヨソウ? とかいうのをわざわざニュースで流すんでしょう? 植物が咲いたり枯れたりするのをいちいちテレビでやるなんて、ここはずいぶん平和なんだねえ!

 欠片ほどの悪気もない口調で堂々と言い放ちながら、彼は薄桃色の花びらが舞い散る道へと足を踏み入れる。私の手をしっかりと掴んで離さないまま。

 でもここがそういう平和なトコで良かった、そのおかげでこうして一緒にオハナミに来られるんだもんね。おいら、戦ったり殺したりするのは何ともないけど、キケンな場所だと一緒にはいられないでしょ? だから、どっちかで言うなら平和なトコの方が好きかも知んない。

 能天気に物騒なコトを大声で言う彼を、苦笑してたしなめられる程度には私も一連の状況に慣れてきた。
 「今年」と言わず「ここで」という表現を用いるしかないこの生き方にも、あらゆる『枠』から外れた自分達の時間の流れに対する概念も……日を追うごとにそれまであった過去から乖離してゆく感覚、引き返せたハズだった地点をもうとうに越えてしまっている現状、なのに「戻りたい」とはこれっぽっちも考えていない自分。
 もともと人間ではない彼らと比べたときの方が、より「近い」と感じられるようになってきている。
posted by 樋川春樹 at 19:34| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月26日

【指令】第21週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『屏風』
『さりとて』
『クリームソーダ』

・期限は2013年4月3日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年4月1日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 16:31| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"動物園"

子どもの頃にしか行ったことがなかった
大人になってからいくのは
何だか違う気がしてた

知識は持っている
例えばクマとかパンダが
ぬいぐるみと違って
獰猛な生き物だということとか

たくさん映像も見た
別にわざわざ出向いてみるほどでもない

彼女に行こうといわれたときは
ずいぶん子どもっぽいなと思った

でも半ばお付き合いで行ったのに
僕のほうが楽しんでしまっていた

手足を動かす様子
歩く、走る、飛ぶ、鳴く
すべてに命が宿っている
半分死んだような人ごみに
毎朝もまれてる身としては
とても一つ一つが生き生きして見えた

触れてみると鼓動を感じる
ぬくもりを感じる
バーチャルや映像やぬいぐるみでは感じ得ないものが
そこにある

生きていこう、そう思えた
シンプルにややこしいことは考えず
心臓が鼓動を刻む、呼吸をする
その限り、ずっと
posted by 華涼紗乃 at 16:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"ストーカー"

ちょっと聞いてよ、最近、何か男の反応が悪いのよね
へえ〜、何でだろうね?
合コンとかでいい雰囲気になるのにその後が続かないの
いつも誰か彼氏にしてたのにね
そうなのよね!私なんか変わった?

何も言わずに首を振った
だよね〜って言ってる彼女

変わったのは男たちのほうなんだよ
とてもとても慎重になったの
あなたの男遊びや今までの男性に対する仕打ちを
みんなみんな噂で聞くようになった

さらに最近は本名を聞けば検索できる
SNSとかたくさんあるし
たどれば誰とでも繋がれる便利な時代

それにあなたは発信してるよね

「あの男つまんない」
「プレゼント買わしてお別れしよー」
「キープしとこうかな」
「今日は彼にナイショで合コンなんだ」

あなたが把握してるよりずっとずっと
あなたの発信してる事柄は広がってる

昔はストーカー並に調べなくちゃダメだったこと
今は手のひらで簡単に知ることが出来る

あなたに引っかからなくなったんだよ
みんなとても賢くなった
いつ気づくのかな?それに
みんな知ってるって
あなたが思ってるより
ずっとずっと奥深くまで
posted by 華涼紗乃 at 16:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"憶測"

こんなに科学も進歩したのだから
もう少し人の身体のことも
わかりやすくなって欲しい

自分自身で確実に診断できるような
病院を利用するのは確定する検査や
原因を取り除く手術だけで
薬の処方や自分の身体の診断は自分でつくようになればいい

自分のことを何も知らない人間が
経験だが症例だか知らないけれど
一番多い可能性から
実験的に対処していく治療法は
果たして本当に正しいのだろうか?

ネットでの中途半端な情報
一人で憶測でも予測がついてしまう時代だから
その可能性を微塵も考えない医師に当たると
それこそ目も当てられない
病院では自分の身体についてすら
権利を持たないのだから

憶測で不安になったり
傷ついたりするくらいなら
全部わからないほうがいっそ良いのか
それもそれで不安になるのか

ともあれ中途半端な情報は
身体の毒にしかならない

病は気から
憶測で病気になってしまうくらいなら
気のせいだよって笑ってるのが
一番の健康法なのかもしれない
posted by 華涼紗乃 at 16:27| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月20日

【指令】第20週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『憶測』
『ストーカー』
『動物園』


・期限は2013年3月27日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月25日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 22:22| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ワンピース』

まだわたしがちいさかった頃
世界はひろくどこまでも不思議に満ちていて
世の中を動かしてるおとな達がとてもすごい存在に思えた

彼らはきっと何もかもをきちんと把握して理解していて
皆が皆責任感を持って正しいことばかりをするのだろう
わたしもいずれはそんな彼らの一員となり
社会における義務を果たしてこの世の中を動かしてゆく役に立つのだ

ずっとそう考えそうするつもりで生きてきたのに
なのにどうやらおとな達はそれほどすごい存在ではないらしい
実際のところは誰もが少しずついい加減なことをして
積み重なった失敗の責任を誰がとるのかさえも決まっていない

わたしはひどく落胆したし、傷つきもした
ちいさな頃に自分が見上げ素晴らしいと思った景色の一部に
調和のとれた驚異に満ちた巨大なパズルのピースのひとつに
必ずなるのだ、なれるのだと信じていたのに

けれど最近は落ち込んだ気分もだいぶマシになってきた
とてもいいことを思いついたのだ
つまり、いまある絵柄が気に入らないなら、
そんなパズルは床にぶちまけてめちゃくちゃにしてしまって
空になったフレームの中に新しいパズルを組んでいけばいいじゃないか、と

わたしというピースがはまるのに相応しいパズルを
ぴったりとはまりこんで落ち着いて安らげる、わたしのためのパズルを

そんなことを考えていると、だんだん愉快で愉快でたまらなくなってくるのだ
posted by 樋川春樹 at 22:01| Comment(2) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『いっさい』

汝等此処に入るもの、
いっさいの希望を棄てよ。

その有名な文句は、
地獄の門に記されているという。

希望を棄てよ、
この先は絶望の都。
救いもなければ、
出口もない。

深い憂いに満ちたそのフレーズを、
それなのに心地よく感じてリピートする自分がいる。

この先は地獄、
であればもう二度と、
不確かで身勝手な希望などというものに、
情けなくもすがらなくとも良くなるのだ。

希望があるから人間は未来に期待を賭け、
より良い明日を信じて、
叶わぬ夢を見続けることになる。

底の底にまで落ちてしまえば、
もう地面に叩きつけられる心配はしなくて良くなると言うのに。

永劫に続く苦しみでも、
束の間しか持続しない幸福に比べれば、
まだしも誠実だろう。

其処は地獄の門、
地獄への入り口、
すなわちこの世界からの出口だ。
posted by 樋川春樹 at 15:40| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第20週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『開花』
『とやかく』
『サプリメント』

・期限は2013年3月27日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月25日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 12:37| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"レシート"

どうしてこんなことになったのだろう
その日は普通に始まったのに
眠い目をこすりつつ
最寄り駅までの道を歩いていたら
いきなり黒い袋をかぶせられて
身体を持ち上げられて車に乗せられ
手と足を縛り付けられた

お決まりのセリフ
「おとなしくしろ、従わないと命はない」

それから廃工場のようなところで
マットの上に転がされている
食事とトイレ以外はこの格好
手を伸ばせば届くくらいの高さに小窓があって
そこから射しこむ光で昼と夜の違いがわかる

数時間は呆然としたままだったけど
とりあえず助けを呼ばないと、と思う
鞄以外の持ち物は奪われなかった
胸ポケットの財布を苦労して外に出す
膨らんでいるのはお札じゃなくて大量のレシートのせいだ

これに何か書いて飛ばせば
助けを呼べるんじゃないか?
小石で指の先を傷つけてインクの変わりは血で

一枚にたくさんは書けない
考えないと、考えないと
助かるために

このレシートに命を託す
二つ折りにして
手を伸ばして小窓から次々と飛ばした


posted by 華涼紗乃 at 12:27| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"破損"

紙のお札を貸して
…素直に金貸してって言えば?
違う!紙幣そのものが必要なの!金としてじゃなくて
どういうこと?
マジックの練習してるんだ

満面の笑みで言うから
千円札をつい出してしまった
ありがとうといって友人は受け取り
ビリッ!
ソッコウ真っ二つに破った

…え?準備的なことをした感じはまるでなかったけど??
受け取って破っただけに見えたけど、まさかな?

真っ二つの紙幣を持った友人の顔が
どんどん青ざめていく
…手順、間違えたな

マジックなんだろ?戻せるんだろうな?
え、あの、その…
『貸した』んだから『返せ』よな
えっと、ごめ…
ちゃんと!元通りにして返せよな!

でも、破っちゃったものは…もう元には…
銀行!
…え?
紙幣の破損は銀行行ったらお金と変えてくれる
…そうなの?
さっさと行って来い

うん、じゃあ…
一瞬輝いた友人の顔を見逃さない
ちょっと待て
え?人質としてお前の千円を置いていけ
…えー
それで俺の金持ち逃げしたら詐欺だぞ!!

あはは、引っかからなかったか〜。
友人はそういうと真っ二つの紙幣を重ねて
両手の中に一瞬隠す
ぱっと開いたら元通りの千円札

心底びっくりした
おー、成功、大成功、はい、どうぞ。
な、おまえどうやって
マジックだよ、普通にやってもつまんないしー

情けないことにスキップして去っていく友人と
千円札を交互に見るしかできなかった
posted by 華涼紗乃 at 12:25| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"本棚"

本棚は秘密を隠すもの
本をカムフラージュにして

市販の本棚は本一冊分を置くには
奥行きが広すぎるものが多い
それだけの収納力があるということだけど
人はそこに秘密を隠す

手前に隙間なく並べられた本を
抜き取って奥を見るなんて
心理的にあまりやらない
探してるものがあるなら別だけど

あなたは本の虫だから
背の高い本棚が部屋にある
ずらっと並べられた本は壮観

スマートフォンで写真を撮る
並び順をあとで確認するため

そして椅子を持ってきて
上の段から順番に本を抜き取っていく
本当は投げ捨てたいとこだけど
ばれだからダメだから

やっぱり出てきた
本の壁の奥から
元カノとの写真や思い出の品、過去の携帯電話
捨てるって約束したのに
世には出せない類の大量のDVDや本
捨てるって約束したのにね!

一番下の段の奥から出てきたのは
私の友達とのプリクラ
楽しげに、親しそうに、写ってる

…悟った
捨てなきゃいけないのは私のほうだった
捨てられなくてぐずぐずしてたのは私のほうだった

置きっぱなしの私物をまとめて
まるで魔窟の本棚を元通りに

これからは背の高い本棚を持ってる男とは
付き合わないようにしよう
どんな秘密を隠し持ってるかわからないから


posted by 華涼紗乃 at 12:25| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『隣人』

挨拶だかなんだかわからない
不明瞭なやりとりの他には
口をきいたことがなかったし
まともに顔を見たこともなかった

そういうものでしょう
人はただ「隣に住んでいるから」なんて理由だけで
必要以上に距離を詰めないもの
お互い興味もないならなおさら

でもそれが間違いだったのかもしれない
廊下で会ったあのときに
こちらがきちんと言葉をかけていれば
日々の言葉のやりとりの中で
救われるものもあったのかもしれない

なんて、今さらですけどね
もうどうしようもないのに
死んでしまったヒトも
巻き添えで殺されたヒトも
取り返しはつかないのに

ただ、それは
私だけのせいではないですよねえ?
posted by 樋川春樹 at 11:13| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月13日

【指令】第19週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『本棚』
『破損』
『レシート』


・期限は2013年3月20日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月18日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 23:22| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『フロア』

ウチら中学上がる前ぐらいにさ、
潰れたデパートあったじゃん?
駅からちょっと離れたトコの、
一階にペットショップがあったトコ。

潰れてからも建物だけずっとほっぽらかしにされてて、
取り壊される様子も全然なかったあそこ。

こないだウチの友達の友達が、
肝試しに入ったんだって。
夜中に。
男子ばっか5人ぐらいで。
季節外れだけど、
暇だったからって。
どっかから何かして忍び込んで。

で、一階は何ともなくってさ。
だから、気が大きくなったのかな、
調子乗って地下に降りたんだって。
食料品売り場のあったフロアだよ。
ウチらもたまに行ったじゃん。

そしたらさ。
陳列棚とか冷蔵ケースとか、
そういうのが全部そのまま残ってたんだけど、
奥に行ったら棚が倒れてたり壊れてたりしてる区画があってさ。
そこ見に行ったら。

なんか、バラバラ死体。
いっぱいあったんだって、しかも子どもの。
いっぱい、バラバラだから、数はわかんないんだけど、でも多分、人数ヒト桁じゃすまないくらい。
でも、血は全然流れてなくて、死体、腐ってもなくて。
棄てられたマネキンじゃないのかって?
そいつらも最初はそう思って、何だよビックリさせて、って一人が手にとってみたの。
そしたら、感触がまるっきり人間のだったんだって。
しかも、ちょうど人肌ぐらいの体温があって。
ってか、さわってみたの千切れた手首だったんだけど、その指がまるっきり生きてるみたいに動いたんだって。

連中すっかりビビっちゃって、自分達が不法侵入してたのもアタマの中からぶっ飛んで、警察呼んだんだって。
で、おまわりさん連れて来たんだけどさ、こういうハナシのお約束だよね、棚は倒れてたけど死体は一つもないの。

不思議なハナシだよね。
5人は全員本当に見たしウソなんか言ってないって言ってるし、そのコ達そんなウソつくメリットもないんだし、
だったら地下にあった死体の山って、

一体何だったんだろうね。
posted by 樋川春樹 at 22:57| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ほのぼの』

なんでどうぶつの写真集なんか買うんだよ、一人にした途端に無駄遣いばっかりして……半ば予想は出来てたけど……

癒しが欲しかった?
ほのぼのしたかった?

……アタマ大丈夫?
癒しとか和みとかボクらには全然必要ないだろ、むしろ一番縁遠いモノだろ……

人間に似てなきゃいけないけど
人間になっちゃ駄目なんだよ

そういうの
いらないだろ
いざというときに
邪魔になるんだぞ……

うるさい
なんでもない
ボクらは人間になったりは出来ないんだ
おマエもちゃんと自覚しろよ
ボクらは違うんだ
そういうんじゃないんだよ……

posted by 樋川春樹 at 18:38| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第19週:華涼→樋川

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『隣人』
『いっさい』
『ワンピース』

・期限は2013年3月20日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年3月18日0時より、期限までに発表する。

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posted by 華涼紗乃 at 17:23| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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