2013年02月20日

【指令】第16週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『成果』
『たらふく』
『キャップ』

・期限は2013年2月27日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年2月25日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 19:51| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"ごみ捨て場"

助けて、たすけて、タスケテ…

重い、動けない、もう一歩も
辛い、でも泣けない、涙なんて枯れた

ここは暗くて冷たくて

渇く、渇く、のどを掻き毟りたくなるほどに
付け焼刃に咳をしても、もう苦しいだけ

ほんの小さなひとかけら
言われて嫌だったこと
されて嫌だったこと
無理矢理やらされたこと
ストレス、ストレス、ストレス…

見ないように、気にしないように
傷つかないように全部流したつもりだったのに
気がつけば膨大な量になっていて
うずたかく積み上げられている

そこから染み出た嫌な液体は
澱のように泥のように心に巻きついて
冷やして固めて渇いてゆく

このまま砂で出来た城みたいに
風に吹かれて消えてしまえば楽なのに
そうはいかない

生きてる以上
生きていかなきゃいけなくて
生きてる以上
ごみはどんどん溜まっていくのだ

もうとっくに満足して
あとは不満だけが
増幅されていくだけなのに

手を伸ばしても
空さえ
ごみに阻まれて
もう少ししか見えない
posted by 華涼紗乃 at 19:45| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"合法"

法律なんて関係ない!なんて
甘いこと言ってるんだから

漢字も読めない、物も知らない
可愛いだけの若い子に
そうやすやすと
やられたりするもんですか

出し抜きたければ
もう少し人の見る目と
さまざまな経験をつんできなさいな

あ、そうそう「慰謝料」くらい
読めるようになっていてね

彼氏彼女なら合法よ
とったりとられたりはお好きになさいな
でも結婚は契約
婚姻届はそれだけ重いものなのよ

でも良かったわ
私はその重さに潰されそうで
そろそろ疲れていたから
厄介払いした上に
お金までもらえるなんて
さらに勝ち誇った小娘に
制裁を加えることが出来て
ますます愉快だわ

あの頼りないぼんくらにそろそろ連絡取ったらどう?
助けてくれるとはとても思えないけどね
posted by 華涼紗乃 at 19:45| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"イベント"

冬はイベントが多い
クリスマスにバレンタインにホワイトデー
寄り添うほうが暖かいから
自然とそうなったんだろうか?

最近はカップルだけのイベントではなくなって
みんなで集まってわいわい騒ぐことも出来るから
まだまだマシになったほうだ

なんだかんだと売れるので
テレビや雑誌やネットで
大々的に宣伝するのだろう

でも
もうそろそろうっとおしい
皆なんでそんなにテンションが高いんだ

俺が一人だからじゃないぞ

それなりに予定が入っている「こともたまにはある」し
チョコも「実物じゃなくてアイテムだけど」もらえるよ

それにしても皆楽しそうに生きている
人生のイベントを確実にクリアしていって
そんな気概はもう失せた

一発逆転のチャンスが
転がってこないもんかと
妄想くらいしかできない
ただただ、むなしいだけだ

将来なんて何がどうなるかわからない
ビジョンもない
ただゆるゆるとこのまま過ごして年を取るのだろう

イベントはたいてい
必要条件を満たさなきゃ
自分の身には起きないものだからな
posted by 華涼紗乃 at 19:43| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第16週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『見取り図』
『計算ミス』
『スナック菓子』


・期限は2013年2月27日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年2月25日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 02:06| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ショコラ』

 一本足の丸いテーブル、その上に並べられた四枚の白い皿の上。
 ほとんど隙間なくびっしりと、咲き誇る花のようにずらりと並ぶのは、とりどりの意匠を凝らしてつくられた、菓子とは思えぬ美しさを備えた菓子の数々。
 ひとの手でなされたとは信じられぬほどに繊細な細工を施されたそれらは、口に入れる行為が不遜と思えてしまうくらいにいっそ神々しさをすら感じさせる。

 チョコレート、なんて呼ぶのが申し訳ないみたい。チョコッて言ったら、イメージは板チョコだからね。気取って言うならショコラッて言うの? どっちにしても、食べるのがもったいないね。

 ユルい笑顔を浮かべて、館のあるじはそう言った。
 だから彼は−館の家事全般雑務一切を取り仕切る、生真面目な執事然とした黒髪の彼は−しっかりと毅然と、けれど押しつけがましくならないよう注意を払いながら、彼女に向かって言う。

 食べていただかなければ困ります、これだけの量をいつまでも飾っておくわけにはまいりません。それに何より、これはあなたへのバレンタインデーの贈り物なのですから。

 でも、これ全部私が食べるの? テーブルいっぱいのチョコレートのお菓子を、一人で? ねえ、みんなで分けて食べちゃいけないかな? 甘いもの、嫌いじゃないけど、さすがにこれはちょっと多すぎるよ。

 嬉しそうに、ほんの少しだけ照れたように、言葉をつなぐ彼女に。
 意図してきっぱりと首を横に振って、彼は慇懃な態度で言い渡す。

 いいえ、お一人で全て召し上がっていただきます。何故ならば、これらは全てあなた一人のためだけに用意させていただいたものなのですから。お茶の時間に食べ切れないとおっしゃるのでしたら、夕食も明日の朝食もチョコレート菓子になさいませ。

 黒髪の同居人の珍しい冗談に、館のあるじは一瞬だけかるく瞳を見開いて。
 それから、実に楽しそうに声をあげて笑い始める。

 わかった、わかったよ。命を賭ける覚悟でいただかせてもらうよ。せっかくの心尽くしだものね。でも、本当に食べてしまうのがもったいないぐらいに綺麗なショコラだね。

 『枠』の外側で生きていながら、それでもときには内側にいた頃と同じようなことをしたがる。
 する必要のないことを、本当はしたいとさえ思っていないかもしれないことを。
 多分、自分達は今でも人間で居続けたいと願っているのだ。
 もう戻れない一歩を踏み出してしまった自分を、自覚していながら、それでもなお。
posted by 樋川春樹 at 02:04| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『てっきり』

 ───死んだ。
 と、てっきりそう思った。

 酷い夢の中から急激に醒めるときのように急に目を開いて、それが早合点だったことを知る。
 こうして目覚めた以上は、ただ意識が途切れていただけのようだ。
 それなら、とほとんど無意識の動作で起き上がろうとして、自分の身体の大半が思い通りに動かせなくなっていることに気づいた。
 仰向けに転がった状態で、しばらくの間ごつごつと冷たい石の感触をただ背中に感じる。

 『木偶』は近頃、段違いに強くなった。それに、ちょっと途方も無いほどの勢いで数を増している。
 少し前までは『木偶』がどれだけいようとこちらは一人で何の問題もなく相手が出来た。殲滅までに大した時間もかからなかった。
 ところが今では、百にも満たない数の『木偶』に少々苦戦するような事態が度々起こるようになった。状況を終了させるまでに前とは比較にならないぐらい時間を費やさなければならなくなったし、稀にとは言え今まさにそうなっているように行動不能になるほどの傷を負わされさえするようになった。

 『枠』の中にはいたるところ『木偶』が溢れている。
 『木偶』とは、つまるところ愛することも愛されることもなかった魂のなれの果てだ。
 愛されたいと願いながらもついにかえりみられなかったもの。
 自らが愛することを最後までおぼえられなかったもの。
 誰からも必要とされず誰をも必要とせず、ほんとうの意味でのつながりを持てずに、宙に浮いてしまった存在。
 その欠片がひとつところに集まり、引き返せないほどに変質してしまったもの───それが『木偶』だ。
 昔、そのように説明されたことがある。

 ひととは異なる『狩人』である彼には詳しくはわからないが、『枠』の中はもう随分と不幸で物騒な場所になってしまったようだ。
 自分達がどれだけの数の『木偶』を壊しても、『枠』の内側が永遠に変わってしまったのであればそれはしても無駄な努力ということになるのかもしれない。
 それでも、『狩人』は与えられた使命のままに『木偶』を壊し続けるだけだ。
 全ての『木偶』が全ての『枠』から姿を消すまで───あるいは、もしかしたら、自分が『木偶』に壊される日が、来るまで。
posted by 樋川春樹 at 02:03| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『充実』

 わたしはもう十分に長いこと生きました。
 いろいろなことがありました。
 けして幸福なことばかりではなかったけれど。
 思い返す度に声をあげて泣き叫びたくなるぐらいに悲しいこと、つらいこともたくさんあったけれど。
 それでも、今こうして振り返ってみれば。
 充実した、素晴らしい人生であったと言い切れます。
 わたしの身に起こった何もかもが、今日この日のわたしをつくりあげてくれた。
 どれひとつ欠けてもわたしがわたしでなくなってしまう、全てが大切な記憶。
 だから、わたしは心の底から、何度でもこう言えるのです。
 もしも時間が巻き戻って、もう一度人生を生き直せるとしても、そっくりそのまま同じ日々を生きたいと思えるほどに、充実した……わたしにはもったいないほどの、素晴らしい人生でした。

 静かな口調で語る老女、穏やかで迷いのない微笑、深みのある声が部屋の中をゆるゆると流れてゆく。

 家族、恋人、友人のあらかたを、一人の人間が一生に一度遭遇すればそれはどうしようもない不運だと表現出来るほどの事故や災害で失い続けた彼女は、人生最後の日に、それでも優しく笑っていた。
 運命は、その生涯に渡って彼女から大事なものを奪い続けたというのに。
 それをことさら嘆いてみせることも、まして恨み言を口にすることもなく、彼女はただあらゆることを受容した笑顔で、かみさまのような笑顔で、自分の一生は素晴らしいものだったと、断言した。

 『引き金』を握った手を灰色のコートに隠して、窓の前に呆然と立ち尽くす私を、彼女はどのような存在ととらえただろうか。
 ようやく自分を連れに来た、遅刻癖のある死神と思ってくれたのか。
 あるいは、私こそが彼女を翻弄し続けた『神』であると───気づかれてしまっただろうか?
posted by 樋川春樹 at 02:03| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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