2013年02月13日

【指令】第15週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『充実』
『てっきり』
『ショコラ』

・期限は2013年2月20日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年2月18日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 19:58| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"容疑者"

何にも悪いことはしていない
その思いは今でも変わらない

人を騙して何故いけない?
騙されるほうが悪いんだろう!
現に相手にもおりるチャンスはいくらでもあったはずだ
それを選ばなかったのは自己責任じゃないのかよ?!

昔からゲームは裏技ばかり使ってた
他にもテストとか提出物とか
少しでも楽に出来る方法を探して探して
今まで生きてきたんだ

人に危害を加えるのはいけない
自分だってやられたら痛い
それはわかる
だから一度もやっていない

ターゲットにはほとんど手を触れないし
怒鳴りつけたことさえない

仲間は言う
お前は失敗したんだよ、相手が悪すぎた
警察は言う
騙す意図があったのなら、これは罪だ

テレビで報道されている容疑者は
拘置所の中で頭を抱える
失敗したことはわかる
負けたこともわかるが
ここに閉じ込められるようなことなのかがわからない

ペナルティが途方もないことを誰も教えていないのだ
そこに想像がいかない
これから彼には相当なしっぺ返しが降りかかる

知らず知らずのうちに
人生そのものをチップに
ギャンブルしていたなんて

彼こそ、心底騙されてたのかもしれない
posted by 華涼紗乃 at 19:53| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"メニュー"

今朝は死ぬほど寒い
布団から出たくないこんな日なのに

起きろ!
掛け布団を引っぺがされた

半分だけ目を開けて声の主を確かめると
仁王立ちした姉さんの姿

人の部屋に勝手に入ってくんじゃねーよ!
朝っぱらから!布団返せ!
もう、朝だ!遅刻するぞ!
何だよ、もう…

ふらふらと起き上がりベッドに座ると
ぐいっと箱を押し付けられた
あ?
チョコだ、やる!
じゃあな!早く起きろよ!
部屋を出て行く姉さんの後姿
耳が真っ赤になっていた

箱を凝視して開けてみると
カップケーキのようなものが入っていた
思わずそれを持ったまま居間へ降りていく

あら、おはよう、貰ったのね
おはよう、うん、何これ?
今日はバレンタインでしょ?
フォンダンショコラよ、リクエストしてたじゃない

そういや数日前にバレンタインで
欲しいチョコのメニューを聞かれた
でもあれは彼氏に作るんじゃないのか?

彼だけでなくあんたにもあげろって言ったのよ
お母さんだけじゃ、味気ないでしょ

ふーん、ご丁寧にどうも

なんて言ったけど
じわじわ嬉しくなってきた
後で大事に食べよう

それで美味かったよって
さらっと言ってやるんだ
posted by 華涼紗乃 at 19:52| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"抜け道"

この世界に来たのは
結果的に正解だったと思う

来た時は
後悔し、悔しがり、懐かしんだものだが
それももう随分昔のことだ

奴隷として売られた僕は
今は奴隷を使う立場にある
料理人の元締め
奴隷の売買など
いろいろ手を広げている

何故この仕事をしたのかというと
楽しくて仕方ないからだ
世界の色が希望が絶望に変わる様が
顔色、態度、声色、しぐさ
すべてが僕にとって甘露である

僕が奴隷から這い上がれたのは
"抜け道"のおかげ
奴隷牢にはぱっと見はわからない
からくりが仕込んである
それを見つけて開けたものだけが
誰にも悟られずに外に出られる仕組み

現実の世界に染まっていたやつは
抜け出そうと考えもしない
または考えても長続きしない

だから奴隷は奴隷のままで終わることが多い
僕みたいなのは本当に稀なのだ

これからもこの世界でやっていく
現実よりもはるかに
手ごたえがあるここで

今日も酒が美味く飲めそうだ
posted by 華涼紗乃 at 19:51| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第15週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『イベント』
『合法』
『ごみ捨て場』


・期限は2013年2月20日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年2月18日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 19:44| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ジュース』

 何のために?
 どんな意味があって?

 発することそのものが誤りである、という問いも世の中には存在するものだ。
 これはその最もわかりやすい例。

 ひとりの子どもが今まさにその生命を終えようとしている。
 散らかり放題の薄暗い部屋の中で、たったひとり。
 冷たい床の上にうずくまって、もう動くことが出来ない。
 誰にも望まれないままこの世に生まれ落ちてから、わずか数年の短い一生だった。
 子どもは懸命に生きようとしたけれど、周囲の大人達は優しい手を差し伸べたりはしなかった。
 誰からも愛されず、ひとりぼっちで捨て置かれて。
 最期の数日間は散乱した生ごみを食べて飢えをしのいだけれど。
 そこまでだった。

 悲しいことだ、それはもうどうしようもないくらいに、絶望的なまでに悲しいことだ。
 この子の痛ましい死を知ったなら、心ある人々は皆が大いに嘆き憤り、いたいけな子どもが何故このように悲惨な目に遭わなければならなかったのかと問うだろう。

 その問いに答えがないことを、誰もが薄々気づきながら。

 まず認めよう、そもそもひとが生きていることに意味などはないのだということを。
 誰もが何かを成し遂げるためにこの世に生まれてきたのだと、そういった根拠のない決めつけが大勢を不幸にしているのだと、それをまず受け容れよう。

 生きることに意味はない、であれば何事をも成せなかった一生でも、「それはそういうものだったのだ」と割り切ることが出来る。
 いま子どもがひとり、寒い部屋の中でその短い生涯を終えようとしている。その子は両親からさえも愛されず、ひとりの友達もつくれず、この世界に生まれ落ちてこの方良い思い出などひとつも持てなかった。常にイライラとしている親の叱責や罵声に怯えながら、満足な量を与えられない食事を補うべくゴミ袋に捨てられたジュースの空き缶にさえしゃぶりついて、優しく抱きしめられることも楽しく笑いあうこともなく生きていた。その子は一体何のために生まれてきたのだろう? 「何のために」などない、「それはそういうものだったのだ」。

 けれど、マトモな人間がこの考え方を受け容れることは、おそらくない。
 意味づけの毒に狂った人間の脳は、無理矢理こじつけてでもあらゆる物事に意味を見い出さずにはおかない。
 それは当事者である子どもにしても同じ、自分の一生にそもそも意味がなかったということを、まだものごころつく前の幼さにも関わらずその子は受容出来ないのだ。

 何のために。
 どんな意味があって。
 何故。
 どうして。
 どうして自分が。
 どうして自分だけが。
 自分の生命にはどんな意味が。
 生まれてきたことにどんな理由が。
 何をするために。
 何も出来なかった。
 本当は。
 本当は。
 本当はもっと違った生き方が。
 成し遂げるべきことがあったはずなのに。
 それなのに。
 それなのに。
 それなのに。

 ───無念が、凝る。
 またあたらしい『木偶』が生まれる。
posted by 樋川春樹 at 19:42| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『すかさず』

 はじめて『木偶』が発見されたのは、いつのことで、どこでだったのか?
 驚くべきことに全ての世界のあらゆるものごとを記録し記憶しているはずのこの図書館にさえ、その明確な記述は存在しない。
 気づいたときには『木偶』はあらゆる時間・あらゆる場所にいて、全ての『枠』を虚ろに喰い荒らす機会を狙い続けている。

 ボク達のように『木偶』と戦いそれを消し去る役割を負ったもの達は、大昔から複数存在していた。
 呼び名は色々。ボク達は『狩人』と呼ばれるし、『天使』という名を与えられることもあれば、『使徒』と呼称されることもある。もちろん他にも呼び方は多数ある。

 『木偶』の存在が観測されると、それを駆除・殲滅せよという指令がすかさず下される。連中は世界にとってはどうしようもなく有害で、放置することの許されない害悪だから。
 ボク達の中の誰がその指令を受けるのかは、そのときが来るまでわからない。ボク達の『マスター』に指示を出すのは、その全容を把握することが誰にも出来ないほどに巨大な複数の『枠』にまたがる組織だ。その組織が一体何なのかさえも、ボク達にはわからない。

 『枠』の裏側を見るときは、わかることの方が少ないほどだ。
 ボク達もなるべく知識や情報を増やそうと気をつけてはいるけれど、何かにつけものごとは想定よりも遥かに複雑に入り組んでいて、付け焼刃の認識なんかはたやすく振り切られてしまう。
posted by 樋川春樹 at 19:41| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『衝撃』

 あれからもうどのくらいの時間が経っただろうか。
 あれから……生まれてすぐに死んでしまう運命にあった赤ちゃんを、途方もない回数の試行錯誤の末に天寿を全うさせるぐらいまで生き延びさせてから。
 変えられないものなどないのだと証明したくて、自分でもどうかしてるんじゃないかと思うぐらいにその運命を変えることに固執した。常人ならばとうに発狂していても不思議はないほどの膨大な失敗の果てに、『引き金』はついにこれまでならあり得なかった未来にその赤ちゃんを送り出した。
 今にして思えば、自分がどうしてあのときに『その逆の存在』について思考を巡らさなかったのか、すこし不思議に思えてしまう。

 彼女に出会ったのは、単なる偶然だった。
 とある航空機事故におけるたったひとりの生存者。
 初めて彼女を見たとき、強運の持ち主なのだろうとは思ったけれど、それはまだそこまでのことで。
 彼女の真価に気づいて衝撃を受けたのは、『引き金』を用いた介入を始めてからだ。

 彼女は『強運の持ち主』なんてありふれた表現では説明がつかないほどに、運の強い人物だった。
 どんな過酷な運命をぶつけてみても、かならず生き残ってしまうのだ。
 大した怪我も負わずに生き残り、どの人生においても100歳を超えるほどの長生きをする。

 彼女が通学に使っていた電車を脱線させてみたこともあった。
 彼女が休日に歩いている交差点に大型トラックを突っ込ませたこともあった。
 80歳を超えた彼女が心臓発作を起こして救急車で搬送された晩に、大渋滞を引き起こして病院に辿り着けなくしてやったことさえあったのに。
 何をどうしようとも、彼女は定められた寿命の日−同じ年の同じ日の、同じ時間の同じ場所−でしか死ぬことがなかった。

 100年以上に及ぶ彼女の人生のあらゆるポイントで『引き金』を試す。
 それは前回以上に正気の沙汰とは思えない、偏執狂じみたチャレンジだった。
 『枠』の外に流れる無限の時間を潰すにしても、それはあまりに手間のかかり過ぎる大仕事だった。
 けれど彼女は、こちらの執着をものともせずにあらゆる運命を切り抜けてしまう。
 まわりでどれだけの人間が死のうとも、彼女一人だけはどうしたって生き残ってしまう。

 これは一体どういう運命なのか───数え切れない回数彼女の最期を看取っても、よくわからない。
 何かに護られている、なんてことではないだろう。
 だって、彼女の人生はいつも決して幸福なものとは呼べなかったから。
 定められたおしまいの日、彼女はそれまでの人生を振り返る。
 自分の目の前で生命を落とした多数の人々、救えなかった人間、もしかしたら自分の代わりに死んでしまったのかもしれない人間の数をかぞえながら、彼女は息を引き取るのだ。
 それは多分、生まれてすぐ死ぬことよりもずっと残酷で救いのない運命だ。

 だから。
 変えられないものなどない、そのフレーズをまた心の中に呼び起こす。
 もしも彼女が、家族と、友達と、恋人と、同じ事故で───死ねるのなら。
 あるいはそれこそが、彼女を幸福にしてくれる運命なのではないかと、思うから。
posted by 樋川春樹 at 19:41| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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