2012年12月19日

【指令】第8週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『歓喜』
『こまごまと』
『カフェ』

・期限は2012年12月26日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2012年12月24日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 19:05| Comment(2) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"シュレッダー"

バリバリとすごい勢いで噛み砕く
書類10枚程度ならあっという間
CDだってDVDだって
プラスチックのカード類だって難なく粉砕

最近はどこのオフィスでもある
俺もそんな中の一台

毎日何かしら粉砕したいものを持ってくる
何でニンゲンは
そうなんでも粉々にしないと気がすまないんだろうね?
まあ、そうしてもらわないと俺も存在意義がないけど

よく見ていて気づいたのは俺を使うのは
だいたいそのオフィスの中でも下っ端の人間のようだということ
俺のいるところはオフィスのはずれだから
そんな連中は俺を使いながら
愚痴をはいたり、ためいきついたり、
ぼーっとしたり、気合入れたり、
いろいろな表情を見せてくれる

それを見ているとニンゲンは本当に大変そうだ

あるとき、若い男がやってきた
頭も何だかくしゃっとしてるし
ネクタイもバランスがおかしい
大あくびをしながら俺のスイッチを押した

俺はいつものように動き出したら
いつもと違う手ごたえ
あ、ネクタイが巻き込んでやがる
…やれやれ
スイッチポンの簡単設計の俺様も
まともに使えないようじゃ先が見えたな

…ってまだ気づかねえのかよ!
おい、俺は自分では止められねぇんだよ!
さっさと気づけよ、首締まって死ぬぞ!
posted by 華涼紗乃 at 18:59| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"ペットボトル"

姉がいつのまにかペットボトル貯金を始めていた
こないだ用事があって部屋に入ったら
小銭がぎっしり入ったペットボトルが2つ

何だか違和感
こういうのは姉の趣味じゃない
イラっときた

これ、どうしたの?
お金ためてるんだ、年末は何かと物入りだしな

えーえー、クリスマスにお正月に
カップルにとってはイベント目白押しですからね!

な、そういう意味じゃなくてだな!

じゃあ、どういう意味だよ?
だいたい金ためるにしてもこんなの姉ちゃんっぽくねえよな?
そ、それは、その
何?このペットボトル、カレシに買ってもらったの?
う…もう!弟には関係ないだろう!
え?マジ?気持ちわるっ!
気持ち悪いって言うな!もう出てけ!

背中をぐいぐい押されて
部屋から追い出されてしまった
しかし、あんなものまで取っておくなんて
ちょっとすごい
ペットボトルって積極的にリサイクルに出すものだろう!

確か告白したのは彼氏のほうだったのに
何で姉ちゃんがあんなにハマってるんだろ?

…ちょっと本気で心配になってきた

posted by 華涼紗乃 at 18:57| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"コンサート"

もうすぐ世界が滅びる日だね
あんなのもう随分前に否定されたよ?
わからないよ、きっと何かは起きるんだよ
馬鹿馬鹿しい、いつも通りに決まってるよ

すれ違い様に聞こえた会話

立ち止まって振り返った
笑顔で話しながら遠ざかってゆく二人

きっと話を振ったほうも
信じてなどいないのだろう
心の片隅でほんの数パーセント
本当に滅びたらどうなるだろう?なんて
空想や期待はしているとしても

しかし、それは本当に現実のものとなる

あと数日でこの星は大きく動き出す
雲は渦巻き、地はひび割れ、海は荒れ狂う
建物は崩れ落ち、交通機関はすべてストップ
通信機器も全部使えなくなる予定だ

人が築き上げた世界が
人に対して牙をむく

どんな轟音が鳴り響き
どんな悲鳴が響き渡るのか
今からとても楽しみだ

どんな生命も助かりはしない
だけど一瞬で死滅するわけではない

だから出来るだけ長く生きるよ
人々の絶望の声を
少しでも長く聞いていたいから

カウントダウンは始まっている
コンサートはもうすぐ開演する

posted by 華涼紗乃 at 18:56| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第8週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『喫煙所』
『寝不足』
『時限爆弾』


・期限は2012年12月26日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2012年12月24日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 02:53| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『コットン』

「あーあ、まぁたこんなトコロにひきこもって本ばっか読んでるー」
「……何か用?」
「何か用、ってか、もう夕ご飯の時間だよ! 窓のない部屋にいて時計見ないからわかんないんでしょ。『マスター』が呼んで来てって言ったから来たのー。今日のゴハンはカレーライスだよ!」
「……あぁ、もうそんな時間なのか……ついつい没頭しちゃってたな」
「そんな古臭い本ばっか一日中読んでて、面白い?」
「おマエの相手してるよりは面白い」
「うわヒドい」
「あと、内容を問わずに雑多な知識を入れておくことはボクの役目でもあるからね。ボク達は色んなところに行くだろ。どこでどんな情報が役に立つかわからないから」
「ふーん……イマは何を読んでたの?」
「コットンってものを知らなかった頃のヨーロッパについて。……おマエ、綿ぐらいは知ってるよな」
「まぁたおいらをバカにして! ワタぐらい知ってるよ、こないだクリスマスツリーに雪の代わりに飾った奴みたいなのでしょー」
「……知ってるって言っていいのかな、ソレは……まあいいけど。コットンの現物を知らなかった当時の人間は、遠い異国に羊のなる木が存在して、そこからコットンがとれると思ってた。プランタ・タルタリカ・バロメッツという名前の伝説の植物だ。実の中の子羊は木のまわりの草を食べて育ち、やがてまわりに草がなくなると飢えて木と共に死ぬ。この羊は蹄まで羊毛になっているので無駄なところがなく、その肉はカニの味がするらしい」
「なンでヒツジなのにカニの味がすんの……?」
「そこまでは知らないよ。当時の人間達に会うことがあったら直接訊いてくれ」
「ってゆーかそのチシキって一体どこで何の役に立つの?! ワケのわかんない木の名前まで覚えて!」
posted by 樋川春樹 at 02:50| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『たびたび』

 夢の中で夢から醒めて、その夢の中でまた夢を見ていた。
 暗い部屋の中で目を開いたとき、自分が一体どこにいるのかすぐにはわからなかった。
 夢の中なのか、現実なのか、それとも夢の中の夢の中なのか。

 ここは、現実。多分、だけど。

 夢はよく見るほうだ。
 よく見るほう……いや、ほとんど毎夜、見る。
 ひと晩に何本も。

 酷い夢。
 怖い夢。
 嫌な夢。
 暗い夢。
 重い夢。
 痛い夢。

 いい夢も、ちゃんと見る。

 たびたび見る夢がある。
 同じ夢ではないし、続きものというわけでもない。

 とある町で暮らしている夢。
 その町に住む人達を私は知っている。
 その町に住む人達も私を知っている。
 見慣れた景色−一度も見たことがないはずなのに懐かしい風景−次の角を曲がると何があるのか、夢の中の私は知っている−どこにあるのかもわからない町なのに。

 その町にある自分の家の、自分の部屋の自分のベッドで眠りに落ちて。
 現実、で目を醒ます。
 でも私は何故か知っている、自分がまたその町で暮らしている夢を見ることを、いつになるかはわからないけれど、その夢を必ず見ることを。
posted by 樋川春樹 at 02:49| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『憤怒』

 届かない。
 届かない。

 喉が破れるほどの叫び、その叫びの引き金となった激情、このうえもなく無力で世界に対して何も出来ない自分自身に対する憤り、起こってしまったことに対する絶望、とりかえしのつかない現実への恐怖───

 届かない、何も届かない。
 あの空はどこまでも青く高く平然と晴れ渡っていて、遥か高みを吹く風は地べたを這いずる生き物達がどのような悲惨の内にあろうともまるで平気なのだ。

 意味をなさない言葉をわめき散らした。
 皮膚が裂けるほどに大地を殴りつけた。
 髪をぐしゃぐしゃにかきむしって頭を抱え込んだ。
 見開いたままの両目はまばたきすら忘れて世界をとらえ続けた。
 身体の内側から自身が灼熱の炎と変わるような。
 あるいは身体の中心から自分が制御のきかない濁流となるような。

 溢れほとばしり燃え上がり荒れ狂うその感情だけが自分にとっての全てなのに、それほどの怒りも世界の何も変えはしない。
 世界にほんのわずかな傷さえつけられないままにのた打ち回るちっぽけな存在を、本当に一顧だにせずに、いつも通りに何もかもは回ってゆく。

『思い起こせ、思い起こせ、神は見ておられることを』

 けれどその感情を、ああ、どうやって抑えることが出来るだろうか。
 大切なものを奪われた。
 大切なものを奪われたのだ。
 この生命よりも大切なものが、永遠に失われてしまったのだ。

 なのに、届かない。
 届かない。
 非力なこの手は何も掴めない。
 非力なこの身は何も変えられない。
 いやだ、そんなのはいやだ。
 そんなのは認められない。

 掴むのだ、変えるのだ、届かせるのだ。
 この世界に、大きな傷をつけてやるのだ。
 そうしてわからせなければならない、この怒りの大きさを、この怒りの重大さを、この怒りの耐え難さを。
posted by 樋川春樹 at 02:48| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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