2012年11月07日

【指令】第2週:樋川→華涼

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ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『隠しごと』
『一進一退』
『氷水』


・期限は2012年11月14日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2012年11月12日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 樋川春樹 at 23:06| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ナチュラル』

 がらんとした空間に、いやに白い光が満ちていた。

 南向きの大きな窓から降り注ぐように陽光が入るその家を、標準的に幸福な家庭の象徴のようにずっと思っていたけれど、その認識はきっと誤りだったのだろう。

 その部屋は偽物じみた明るさに彩られていて、いつもどんなときも笑顔でい続けることを暗黙のうちに住人に強いていた。

 木目を活かしてデザインされたテーブルのなめらかな表面に、一点の陰りもない太陽の光がさんさんと降り注ぐ。

 日に三度の食事のときには、真っ白い食器と銀色のカトラリーが綺麗に並べられた。
 食卓の中央には瑞々しい花が控え目に飾られていた。

 わざとらしいくらいに理想的で、完璧な舞台装置のようなその情景を、表現する単語は「空疎」だったのだ。
posted by 樋川春樹 at 23:00| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ゆるゆると』

 二杯目の紅茶を口にする頃には、張り詰めていた精神もかなりゆるんでほどけてきたようだった。

 やわらかなソファに埋もれるように背中を預けて、両の手で包み込んでいるカップの温かさに頬を寄せる。

 だらしなく投げ出した脚はまるで自分のものではないかのように感覚がなく、今夜はもうこれ以上は一歩だって動かない、ベッドへの移動だって拒否すると言わんばかりに重たく疲れ切っていた。

 ずいぶんと遠くまでやって来たような気がしているけれど、実際はそんなに大した距離を移動して来たわけじゃない。
 ここはまだ私がいた場所とちゃんと繋がっているし、その気になればすぐにでも引き返せるような場所だから。

 今すぐカップをテーブルに戻して立ち上がって、やっぱりうちに帰りたいと言えば彼らはきっとそれを叶えてくれるだろう。
 若干の戸惑いを見せるとしても、あるいはほんのちょっとだけ困ったような表情になるとしても、彼らは私の願いを却下したりはしないだろう。

 それでも、どうだろう、今となっては……。
 それは私の『望み』ではなくなってしまったのではないだろうか?
 私はもう、元のところに帰りたいと思っていないのではないだろうか。
 かつていたあの場所を、自分の居場所だとはもう思えなくなっているのではないだろうか。

 彼らの助けを頑なに拒んで自力で歩いてきたこの脚が、もう1ミリだって移動するつもりはないのだと叫んでいる。
 あの場所から少しでも、少しでも遠ざかるために死に物狂いで歩いてきたのだ。
 「まだ可能だから」なんて理由で戻るわけにはいかない。
 そう、私はきっと、もう戻りたくないのだ。

 甘く漂う茶葉の香りが、強ばった心をゆるゆると溶かしてゆく。

 やがてくたびれきった私は、行儀悪くもソファの上で眠り込んでしまうだろう。
 私が風邪をひかないように、彼らのうちの誰かがそっとベッドまで運んでくれる。
 横たえた私に優しくシーツをかけながら、そのひとはきっと隠し切れない喜びを滲ませながら囁くのだ。



 ようこそ、『枠』の外へ。
 鼓動が時を刻むのを止める場所。
 オレ達がずっとずっと一緒にいられる場所。
 きみがついにボク達の世界を選んでくれたことを、ほんとうに光栄に思うよ。
posted by 樋川春樹 at 22:58| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『秋晴』

 窓枠にもたれて空を見上げる。

 青よりも水色に近い空は一瞬だけ目を疑いたくなるほどに高い高いところにあって、区切られた枠の中からそれをじっと見上げていると、深い深い水底から決して届かないとわかっている水面をなす術もなく仰ぎ見ているような気分になってきた。

 場違いな奇跡のように晴れ渡った空をいつまでも見上げている。

 古びた木で−その木が一体何百年何千年前に伐り倒されたものなのか見当もつかないくらいに古い木−つくられた窓枠にぴたりと寄り添うように身体を預けて。
 そこに何もないんじゃないかと思えるくらい綺麗に、有り得ないくらい綺麗に磨き抜かれた硝子越しに。
 絶対に手の届かない場所を、絶対に辿り着けない場所を、独りでいつまでも見上げている。

 『竜』はきっと、どうしようもなく孤独だったのだ。
 どうしようもなく、途方もなく、圧倒的な、絶望的な、失笑するしかないぐらいの、純粋な孤独。
 ひとりぼっちの『竜』は、世界よりも以前から在るのではないかと思われるぐらいに古い旧いその館の中で、その身に空の色をうつしとった。

 灼熱の太陽が全てを焦がした夏から、吹き荒ぶ寒風が全てを凍てつかせる冬へと季節が進む、そのわずかな合間の空の色。

 遠く遠く、高く高く、霞みながらも冴え渡り澄み通る秋晴の空が、『竜』のさいしょの色になった。

 決して触れられぬ青、焦がれても得られぬその青が、『竜』のさいしょの色になった。
posted by 樋川春樹 at 22:56| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】第2週:華涼→樋川

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ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の三つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『錯視』
『はんなり』
『トランシーバー』

・期限は2012年11月14日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2012年11月12日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


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posted by 華涼紗乃 at 18:50| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"順番"

世の中は不条理に出来ている

人の生き死ににまつわることなど特に

人間の作った道理なんて
人間の及ばぬところでは無意味
当たり前のことだ

だけどときどき思っていた
「生きる意欲のある人」と「生きる意欲のない人」
どっちが優先順位が高いのかと

もちろん生きたいという目的の善悪もあるし
意欲の持続についても
考えなくてはいけないとは思う

けど意欲=エネルギーと考えれば
何だか世界のためにも
ないよりはある人たちがいたほうがいいように思う

所詮は泡みたいな考えで何の筋も通っていない

世界ってそういうもので順番は納得いかない形で
日々、人々のもとに訪れている

私の順番が来たとき
果たしてどう思うのか
来て欲しくなかったのか
あるいは待ちわびていたか
posted by 華涼紗乃 at 18:45| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"医師"

あいつは白い服を着た悪魔だ

こっちが詳しいことを知らないのをいいことに
その白衣の威厳と権限にだけ守られてる

ぬらりと光る眼鏡のレンズを
その下の見下しきった視線を
気持ち悪くうごめく手を
忘れたことは一度もないんだ

だから今度は私の番だ
ひだまりが落ちる教室
今日はとてもいい天気
おろしたてのスーツをきて背筋を伸ばす

もうすぐ来るその瞬間が
とってもとっても待ち遠しい

あいつは気づくだろうか
楽しみで仕方ない

私の威厳と権限を
最大限発揮出来るこのフィールドで
家族丸ごと、どん底に落としてあげる

ガラガラと扉が開く
満面の笑みを浮かべて
そちらを向いて立ち上がる

ああ、最初くらい完璧に装いたいのに
口の端に歪んだ笑みが浮かぶのをとめられない
posted by 華涼紗乃 at 18:44| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"アイスクリーム"

冷やし続けなければ
あっという間に溶けて流れて
何だか気持ち悪い甘い液体になる

手をかけてあげないと
あっという間にだめになる

人の気持ちも同じこと
常に送受信は必要
どちらも過多になってはいけない
どちらもゼロになってはいけない

そのバランスがいい感じに取れていることが大事

アイスクリームを溶かさないように
いつまでも美味しく甘いひとときを味わえるように
気遣い、思いやり、譲り合い

二人で手を取り合うことは
とても素敵なことだけど油断は禁物

今日も帰りにあなたの好きなアイスを買って帰ろう
あなたの幸せそうな顔を見て私も幸せになるんだ

お揃いのスプーンで
二人一緒に並んで
美味しいねって笑顔で食べようね
posted by 華涼紗乃 at 18:41| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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