2011年07月10日

灰色

いけないことでしょうか
あの人を好きでいることは

心の中でそっと
熱い想いを持ち続けることは
咎められることでしょうか

願いが叶うことを夢見るのは
いけないことでしょうか

誰かは私のことを
真っ白な人間だと言ってくれるけれど

憧れと罪との境界線

越えてはいけないのは
わかっているくせに

心の中ではもう何度も
道を踏み外している

そんな私が真っ白なはずがなく
かといって
自分から境界線を踏み越えるだけの黒さもなく

いけないことしてほしい

そんなことばかり考えてる

臆病で中途半端な
灰色の人間なのです

私という人間は

posted by 葉瀬尋 at 16:05| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パーティー

いつもなら遠くで見つめるだけ
だけど今日は少し違う

ステージの上のあなたしか知らないから
普段のあなたがどんな人で
どんな声で話すのか
どんな風に笑って
どんな風に視線を返すのか

知りたいとずっと思ってた
ずっとずっと思ってた

だからこんな風に
あなたと同じテーブルを囲むことは
私にとって夢のような出来事

賑やかな周囲の会話も
私の耳には届かない
ただあなただけ
あなたの声だけ聞いていたい

私を見てください
いつもはその他大勢に紛れてしまうから
今日だけは私を私として
見てください、知ってください
あなたを見つめる私がいること

今日のために用意したドレス
いつもより少し大人っぽく
髪も結い上げてみたりして
見た目はバッチリお嬢様風
お行儀よくしていたいのに

普段はきちんと扱えるはずの
ナイフとフォーク
音を立ててしまうのは
あなたがいるせいです
心が落ち着かないから
手が震えてしまうのです

そんな私に、ふいに
優しく笑いかけてくれたあなた

緊張しなくてもいいのに、と

私がずっと知りたかったもの
私に向けられたらどんなに幸せかと
空想してやまなかったもの

その笑顔、その声、その瞳

それがいま私に向けられている
幸せすぎて笑顔がうまく作れない

ドレス、似合ってるよ
いつもと違う雰囲気だけど
そういうのも良いね

信じられない言葉を聞いた

いつもと違うって?
私を知ってくださってたの?

驚いてる私に

いつも見てくれてるの知ってるよ
ありがとう

嬉しくて涙が溢れた

泣き出した私を見て
慌ててナプキンを手渡してくださったりして

ステージの上のあなたしか
今まで知らなかったけれど
ステージを降りても
やっぱり優しいひとですね

いつもは遠くで見つめているだけ
これからもそれは変わらないだろうけど

なにかが変わり始めるとするなら
なにかを変えようとするなら

今日がその始まりの時

なにかが変わり始めるかもしれない









posted by 葉瀬尋 at 16:01| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"廃墟"

人がいない建物は居心地がいい

適度に空気がよどみ
適度に暗く
適度に埃っぽく
適度になまぬるい

人がいないだけで
建物はあっという間に朽ちていく
本当、生き物なのだなぁと思う

僕たちのような
さまようだけの存在は
ここを根城に
日々のんびりと暮らしている
たまに来た肝試し目当ての若者を脅かすのも楽しい

そんな中、この間、人間の女の子が仲間入りした
僕らを怖がる様子もなく
その子には僕らがまっとうな人間に見えたらしい
周りの大人はすべて化け物だったそうだ

僕らには何もできないよというと
今までも自分のことは自分でしてきたから
何とでもなると笑う
ただ居場所をくれれば良いと

彼女のおかげで薄暗かった建物には
僕らの居心地が悪くならない程度に
少しだけ陽が射した

廃墟での歪んだ生活がいつまで続くかわからないけど
ただいまという声におかえりと返す
そんな生活もまあ、悪くはない
posted by 華涼紗乃 at 12:50| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"灰色"

ふわふわで温かくて
呼吸による上下運動がここちよくて
顔をうずめて眠った

こんなに安らいだ気持ちは久しぶり
日々食べるものと飲むものを探して
ふらふらになりながら歩いてきたから
もう大丈夫、私は大丈夫

うっすらと目を開けると
灰色の毛皮に包まれていることがわかる
動物に抱きついているようだ
下半身の感覚は不思議となくて…
あれ?と思ったけど、まあいいや…
今はこのぬくもりに包まれて眠りたい

狼は…

狼は獲物を見つけて近寄っただけだ
何だかあまり美味しそうではなかったけど
ぐるぐる周りをまわって様子を見たが動く様子もない

試しに足にかじりついた
骨と皮と血だけで美味しくはなかった
立ち去ろうとするとしがみつかれていた
振り払おうとしたが
どこにこんな力があるのだと思うほど強い
届く範囲に噛み付いてみたがまったく力が落ちない

灰色の狼は困り果ててひとつ大きく吠えた
もうすぐ仲間がやってきて
引き剥がすのを手伝ってくれるだろう

それまでに出来るだけ食べておかなければ
不味いけど空腹には抗えない
posted by 華涼紗乃 at 12:49| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"パーティー"

そろそろ頃合かもしれない
我慢も限界になってきた

必死で支えてるものは
どんどんどんどん重くなっていく
どんどんどんどん熱くなっていく
何でこんなことになるんだろう?
一度すべてひっくり返したら
上で胡坐をかいてるやつらも少しは懲りるかな

もうずっとずっと開いてないパーティー
ステップ踏んでリズムにのって
思い切り暴れてテンションアップ
そのあと徐々にクールダウン

そうすると不思議だけれど
すっきりと軽くなり
ひんやりと冷たくなる

そろそろ頃合かもしれない
流れが悪くなっている
老廃物は排出しなければ

さて、じゃあまず足踏みから
posted by 華涼紗乃 at 12:48| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『廃墟』

 廃墟につめたい月光が落ちる。

 かつてここは賑やかな街だった。
 普通の人々が普通の暮らしを送る、どこにでもあるような普通の街だった。
 ありふれた日々、平凡な出来事の連続、時代を動かすでもなく歴史に残るでもない、けれど本当はそれこそがかけがえのない貴重な毎日の積み重ね。
 穏やかで気のいい人々ばかりが住まう街だった。
 近くにある海でとれる新鮮な魚介類をふんだんに用いた料理が名物だった。

 今はもうその面影もなく、かつては頻繁に呼ばれたその街の名を知る者すらなく。

 廃墟につめたく青白い光が落ちる。
 変わらないものも、終わらないものも、何処にもないのだと思い知らせるように。
posted by 樋川春樹 at 02:53| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『灰色』

 廃墟の街、ビルの谷間から見上げる灰色の空は。

 驚くほどに遠い。

 手を伸ばしてみたところで届くはずもなく。
 そもそもはじめから届く場所になどなく。

 どんなときも遥かな高みからこちらを見下ろしている、
 ただ見下ろしているだけの、あの空は。

 世界そのものを象徴するかのようで。
posted by 樋川春樹 at 02:32| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月09日

『パーティー』

 きらびやかに飾り立てられた大広間で、今夜も華やかな宴が繰り広げられる。
 贅の限りを尽くした料理や酒が惜しげもなく供され、耳や口に心地良い会話があちこちで交わされる。
 決して本音を見せぬ同士のうわべだけは和やかなやりとりを横目に見ながら。
 仕立ての良い衣装に身を包み給仕に扮した自分は会場を歩き回る。
 見回せば視界に飛び込んで来るのはいずれ名を知らぬ者とてない有名人ばかり。
 この国の中枢に存在する者、この国の代表として名をあげられる者、この国の人間に広く愛される者。
 この国に貢献し数々の偉業を成し、地位も名誉も財産も、全てを手に入れた人間達。

 一人ひとりの顔と声とを慎重に記憶しながら。
 人と人との間を巧みに縫うように、歩き回る。
 時折呼び止められては用を言いつけられ、そのときには扮装に相応しい働きをしながら。

 囁かれる言葉に意識を集中する。
 やりとりされる目線の行方を観察する。
 自分の耳で、自分の目で。
 誰が信じるに足る人物なのか、誰がみてくれだけのはりぼてなのかを。
 不躾にはならぬように、けれどじっくりと時間をかけて、自分で判断してゆく。

 この国の指導者の息子として生まれた男児は、幼少時より病弱として人目から隠され続けた。
 だから誰も彼の顔を知らない、明日の朝からこの国を治める者の姿を知らない。
 自らの立場に慢心し謙虚さを忘れた立ち居振る舞いを、冷静に見定めている人物の存在を知らない。
posted by 樋川春樹 at 23:21| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

凹廃墟凸

今日もこっそりお城を抜け出し
廃墟と化したこの場所で
私はステンドグラスを眺める

ここは
私が唯一
自分らしくいられる場所

誰も使わなくなってしまった
誰も訪れることがなくなってしまった
この教会

いつだって人の目を気にしなくてはならなくて
心やすまる事がない私に取って
最高に素敵な場所だった

緑に囲まれたこの教会は
人里からも離れ
まるで時間も止まってしまったかのような
そこだけ世界から切り離されたような
そんな錯覚すら感じる

だけどね
こんな教会にまさかの人が訪れてきたの

そう
それがあの方との出会いだった


posted by 月姫瑠璃愛 at 20:35| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

…灰色…

いつからだろう

この世界が

こんなにも色鮮やかだと知ったのは

そう

きっとあの方が現れてからだわ

私はいつも人形で

綺麗に着飾られて

だけど瞳に映る世界は

なんの色もなくて

灰色一色の世界

なんの楽しみも悲しみもなくて

だけどあの方のおかげで

私を取り巻く世界が180度も変わったの

キラキラ輝く世界が

こんなそばに溢れていたなんて
posted by 月姫瑠璃愛 at 20:22| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

♪パーティー♪

今日は私の誕生日
みんないそいそと私の準備をする

私はいつもなされるがまま

この誕生日だって
私のために開かれているのではなく
政治のための道具にすぎない

各国のお偉い方がやってきて
私への献上と祝辞を述べるのだ

そう
とてつもなく
たまらなく
つまらない一日

それでも今年はちょっと違うの

ワクワクすることがあるの

そう
きっとあの方がやってくるから

いつも優しい眼差しで
私にそっと手を差し伸べて
あの方だけは私だけを見てくれる
誰もが私の後ろにいる父を意識する中
あの方だけは
私という一人の人間をみてくれる

真っ直ぐで正直な方…

だから私はとてもつまらない
このパーティを抜け出さずに
父と共に広間へと出るの

黄色い歓声と拍手
賛辞の声

そして私は
一国の王女に相応しい
最高の笑みを浮かべた
posted by 月姫瑠璃愛 at 20:17| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月04日

【第20週】終了→【第21週】はじまります。

お疲れ様です。

 現時点における第20週目各人のお題消化状況に関するまとめです。

 華涼紗乃:3/3:60/60
 樋川春樹:3/3:60/60
 葉瀬尋:3/3:60/60
 月姫瑠璃愛:(第16週で脱落)

 (名前:今週の消化数/今週のお題数:トータル消化数/トータルお題数)

 以上です。

 続いて第21週のお題を発表します。

・パーティー
・灰色
・廃墟

 以上になります。

 7月11日0時までに【詩ならひ】への投稿をよろしくお願いします!

posted by 華涼紗乃 at 15:02| Comment(0) | 連絡帳。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月03日

年代物

長らく生きていると、余計なものを背負うものだよ。

そう言って、グラスを傾けるあの人。

空になったグラスに滔々と注がれるのは、私より長い時を経た琥珀色の液体。

時間をかけて熟成された薫りは、艶やかに胸をくすぐる。

目を細めてゆっくりとその酒を味わう
あの人の仕草が、たまらなく格好いい。

そんな風に俗っぽい感想を抱いてしまう自分は、やはりまだまだ未熟なのだろう。

あの人の横顔を眺めながら、グラスを煽る私。

余計なもの、と表現された様々な荷物の中に、果たして私も含まれているのだろうか。

できれば、必要なものであれば嬉しいけど。

負担になりたくはない。
しがらみになりたくはない。

想われることが、時に重荷になり、苦しみとなることを知っているから。

だけど、止められない。
ぶつけてしまう。求めてしまう。

それは、私の未熟ゆえ。

あの人に少しでも追い付きたい。
だけどそれは永遠に叶わない。

急なピッチでグラスを空ける私にふと視線を向け、その手をポンと、私の頭にのせる。

無理しないでいいからな。

そのまま、左右に数回動かして。

子供扱いしないでください、と言いたかったのに、言葉にならなかったのは

飲みなれない高いお酒に酔ったせいではなくて、

あの人が、私の唇を塞いだせい、だった。



posted by 葉瀬尋 at 22:58| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

あなたが熱くなるのが

瞬間湯沸し器のように

あまりにも急だったから

猫舌の私は

くちをつけられないの

もう少しゆっくりして、ね?

疑ってるわけじゃないから

あと少しだけ待って

あなたの舌で

やけどするのが怖いから


posted by 葉瀬尋 at 21:19| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

図書館

静謐な空間が好きだ。

完全に無音というわけではないけれど、なるべく音を立てないようにしましょう、と、その場にいる皆が示しあわせてひっそりと過ごしている。
人々の意思で守られた、独特の人工的な静けさ。

私はその、人々の気持ちが好きだ。

その場にいる人たちは、それぞれの人生を歩いている。
背負っているものも違えば、何を一番の宝物にしているかも違う。

全員が別々の個性であるにもかかわらず、この場所では全員がひとつの約束を共有する。

その不思議。

夏の暑い時期に、快適な温度に保たれた穏やかなその場所で、ゆっくりと頁をめくりながら…

あの人と自分、あの人と誰か、あの人と共に生きる人。


ここにある書物をどれだけ紐解いても、私の抱えている問題を解決する方法は記されていない。

私の歩く物語の終わりを知ることもできない。

私は私の方法で、物語を進めていくしかないのだと…

そこでふと、鞄から伝わる僅かな震えで思考が中断される。

無意識に思いがあの人へと向かっている自分を認識して、苦笑。

いつになればこの悪い癖をなくすことができるだろう?

二つ折りの機械を開いて、画面に並ぶ、そっけない、だけど私の胸を騒がせる文字を確認して。

ほぼ眺めていただけの本を棚に戻し、静かな空間をあとにする。

自分以外の物語をなぞることは、わずかな安らぎをもたらすけれど。
これから向かう嵐の中が、やっぱり私の生きる場所なのだ。

また次にこの場所を訪れるときにも、私はきっと、この静けさに救われるだろう。

ここに来れば、まわりに同化していられる。
みんなの約束を守る一員でいられる。

だから最後まで、背を伸ばしていよう。

せめて凛と、前を向いて

あの人とまっすぐ向き合おう。


posted by 葉瀬尋 at 21:18| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

∽年代物∽

その白壁の蔵には
たくさんの古いものが眠っている

もう随分昔に
使われなくなって
忘れ去られたようなものたち

昼間に入っても
そこは薄暗く
まるでがらくたよろしくのような
そんな様子なのだが

だけど私は知っている
ここが夜になると
とても賑やかになることを

人が寝静まった頃
この蔵は起きだし
動き出すのだ

古くなれば古くなるほど
物には付喪神が宿るという

まるで物たちに命が宿ったかのように
毎晩毎晩
歌い踊ってる
それが本当に楽しそうで
私はいつもこっそりそれを覗いてから
眠りに付く

まだまだ
この世には
計り知れない世界が広がっているという証

この蔵を
たとえ使わない物たちばかりであっても
ずっと大切に守っていきたい
posted by 月姫瑠璃愛 at 14:21| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"年代物"

大事なものが壊れてやっと目が覚めた
私の行く末を心配しながら逝った父の形見
年代物の、銀色の懐中時計
アスファルトに叩きつけられて
粉々に、粉々になってしまった

自分の責任は自分でとるように
自分の選択は慎重にするように
父の厳しい声が頭の中で聞こえた

そう教えられたのに
私はまた感情だけで安易に突っ走ろうとしている

でもね、でもね
私は私の人生と尊厳をかけて
絶対に許すことができないんだよ
絶対に絶対に許すことができないんだ

壊れた懐中時計は破片まで残らず集めて
袋に入れて首から提げた
場所と道具はきちんと用意した

これから相応の報いを受けてもらう
好きなものを着て
好きなものを食べ
好きなところに行ける生活は

この瞬間に終わる
posted by 華涼紗乃 at 11:31| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"熱"

心の奥底にはきっと導火線付の爆弾がある
爆弾はひとつだけど
導火線は無数に延びていて
太さも長さもまちまちで
小さなことで火がついてジリジリと燃えはじめるが
たいていは妥協や忘却によって消え去る

だけど
消火の機構がきかなくなってしまったら
火種が弱まっても油を注がれてしまったら
一気に爆発する
ごうごうと
ぼうぼうと
燃え続ける

どろどろと心を溶かしながら
ばしばしと心を爆ぜさせながら

熱はエネルギーとなって体や頭を動かすけど
暴走してるだけだから
全部周りを巻き込んで
火をばら撒きながら
燃え尽きて
終わってしまう
無残な焼け跡だけしか残らない

他人のも自分のも侮らないほうが良い
一度心が、爆弾が、破裂してしまえば
もう誰にも止められないのだから
posted by 華涼紗乃 at 11:29| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"図書館"

運命だったのだろう

図書館で
同じ本を手に取ろうとしたなんて
一昔前の少女マンガ的な出会いだったのだから

読書が趣味な私とあなたは
本棚で上手く四角になって
校庭が良く見える窓際で
ささやくように話した
くすくすとこっそり笑ったりして

でも好きとはお互い伝えなかった
この関係が何より大事だったから
これ以上もこれ以下も望まなかった

やがて進路が別々になり
おのおのが大人となり、子をなして、幸せに暮らした
風のうわさで聞こえていたお互いの様子も
徐々に聞こえなくなりほとんど忘れたころ

図書館で
孫に読んでやろうと
一冊の絵本をとろうとしたら
横から伸びてきた手

はっと顔を合わせると
随分渋くなっちゃったあなたがいた
それは私もお互い様だけど
お互いにすぐに気づいて吹き出してしまった

きっと
私とあなたの運命は
この図書館のどの本よりも奇跡的な話に違いない

posted by 華涼紗乃 at 11:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『年代物』

 『年代物のコンピュータ』になんて、はたして価値はあるのだろうか。
 いささか疑問ではあるけれど……。
 何も無いよりは、少しだけマシなのかな。
 でももしかしたら、このコンピュータはボクよりスペックが低いかもしれないよね。
 ボク達は脳にチップを埋め込んでコンピュータがない状況でもある程度優れた情報処理能力を発揮出来るように人体を調整出来るようになった時代を生きている。
 生きてるか死んでるか半信半疑で電源を入れてみたら、気の毒なくらいおんぼろのパソコンは意外とすんなり息を吹き返した。
 モニタにややぼやけた画面が表示される。システム情報を見るまでもなく、このコンピュータに大したことは出来ない。
 いいさ、ほんの少しだけ役に立ってくれればいい。多くは望まない。望める状況でもない。わかってる。
 うっすらと埃の積もったキーを叩いて、指示を打ち込んでゆく。
 おんぼろのパソコンは生き物みたいな緩慢さで一つ一つコマンドを実行してゆく。
 こっちがいくらじれったいと思っていても、機械はお構い無しだ。
 早くしようと努力することもないし、逆にそれは無理だと開き直る素振りもない。当たり前のことだけれど。
 とにかく、いつ電源自体が落ちてしまうかわからない。電気が使えなくなればそれこそおしまいだ。焦る気持ちを懸命に抑えて、ただこいつがフリーズしてしまわないことを祈って。
 いつの間にかこんなポンコツに運命を託す気持ちになっている自分が、少々情けなく思える。
 でも仕方がない。この身が置かれている状況は、ろくな選択肢を与えてはくれないのだから。
 この年代物が作られてから、一体何年が経過しているのだろう。
 どんな人間がこいつの持ち主だったのかは知らないけれど。
 かつてこのパソコンを使っていた奴は、きっと想像もしなかっただろうな。
 何年も経ってから、特別なところなんかないただの普通のパソコンが、
 世界を滅ぼすために利用される、なんて。
posted by 樋川春樹 at 01:26| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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