2011年03月05日

『機械』

 『狩人』はまやかしのいのちで動く。

 人間は元よりヒトならざるものと比較してなお優れた能力を示すその性質から、しばしば高度に完成された機械人形ではないかとの誤解を受けるが、『狩人』の身体は機械とはまた異なる。
 かと言って、いのちあるものを使ってつくられたものでもない。

 『狩人』を構成しているのは。

 かつてどこかの世界に確かにあったのに、今では何もかもから忘れ去られた時間の破片。
 胸が焦げつくほどに激しく狂おしく悔やんで憎んでもなお果たせなかった、誰かの無念の残滓。
 決して手に入らぬもの、二度と取り戻せぬものに向かって懸命に伸ばされた指先を、無情に拒む空隙。
 誰からも愛されずついに顧みられることさえないままに潰えていった、諸々の存在の悲哀。

 並べ立てればきりがない、そのようなかたちを持たぬものを組み合わせ、かりそめの姿を授けて、にせものの時間を与えた。
 それが『狩人』。
posted by 樋川春樹 at 21:11| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『キーワード』

 此処にはすべての言葉がある

 書かれたもの 書かれなかったもの
 語られたもの 語られなかったもの

 すべての情報が
 すべての記録が

 此処には集められている

 想像を絶するその膨大さ

 迂闊に触れれば脳を焼き切ってしまいかねないその情報量を扱えるのは
 ある特殊なやり方を心得ているひとにぎりの存在だけ

 …ボクが最もうまくそれを出来るワケじゃないことは知っている
 それでも自分が『読み手』としての技術を備えていることがボクにとっては誇らしい
 何故なら大事なあのひとの役に立つことが出来るから

 無限さえもちっぽけに思えるくらいに莫大な
 文章の中、単語の中から
 正しい道筋を辿るためのキーワードを見つけ出す『目』
 一見無関係に思える複数の事象を次々に連鎖させて
 表面を眺めるだけでは決して届かない真実を引き出す『目』

 隠そうとして隠し切れないもの
 消そうとしてついに消えぬもの
 忘れようとして忘れられぬもの
 もはや誰にも、取り戻せぬもの

 それらを冷徹に見い出す『目』
 そしてそれを他者に伝える『口』

 ボクにはそれがある
 そしてそれを使える

 すべての言葉があるこの場所で
posted by 樋川春樹 at 20:47| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

☆完成☆

甘い香りが鼻孔くすぐる
キッチンからは軽やかな鼻歌
なんだかこっちまで気分がいい

そうこうするうちに
君がひょっこり顔を覗かせた

次の瞬間
僕はこみあげる笑いを堪え
キッチンへと歩み寄る


君の向こうには
見事な苺のケーキが完成していた

満足そうな期待を込めた瞳
そんな君にそっと手をのばし
鼻の頭についた生クリームをすくう

僕は
デコレーションされた君に夢中さ

先にその苺のような唇
いただきます
posted by 月姫瑠璃愛 at 18:55| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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