2011年02月20日

『うつむく』

あなたの瞳を翳らせるかなしみをまだ憶えているよ

胸に刺さったとてもとてもちいさな棘

ちっぽけすぎてだからこそ抜くことができない

なす術もなくただ黙り込んでうつむくあなたの横顔を

色をなくしたその頬にしずかに染みるかなしみを

憶えている
まだ憶えているよ

posted by 樋川春樹 at 22:29| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"うつむく"

高層ビルの屋上
落ちるぎりぎりに立って
うつむくのは好きだ

頭が一瞬くらっとする感覚
それさえも心地いい
見下ろせばたくさんの光と闇で満たされた海

ここは綺麗だ
とても綺麗

耳元で轟々とうなる風
煽られた髪がバタバタと音を立てる

目を閉じる、一秒、二秒
きっと後ろに誰かいたら
自殺者とかに間違われたりするかもしれない

だけどこれは祈りの儀式
勢いよく飛び出すための準備
身体の内部にふつふつと溜まる力を感じる

パチリと目をあけて視線を上げた
足がコンクリートを思いっきり蹴る

そう、これは祈りの儀式
今の自分を解き放つための
大事な儀式なのだ

posted by 華涼紗乃 at 10:15| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"入れ物"

「子どもは親を選べない」
よくそういうけれど実はそれは嘘っぱちだ

「一回死んでしまったらもう終わり」
よくそうもいうけれどそれも嘘

地上に降りるとこの仕組みのことは
すべて忘れてしまうからそう思われてるだけ

実は人間は何度も何度も入れ物を変えて輪廻する
天国と地上を行き来して魂を成長させていくのだ

当然、魂の段階で入れ物をちゃんと選択する
魂によって選ぶ基準は自由だし
またいざ入れ物におさまってから
事態が急変することもある

イチかバチかという博打のようなものであるが
選べないわけではないのだ

天国は魂の休息所
一生を終えてここに帰ってきたら
今までの魂の記憶を思い出す

壮絶な人生を送ったあとは
もう二度と生まれ変わりたくないなんて
そう思う魂もいる
そしてその選択も自由

しかし
入れ物は刻一刻と変わっていく
身長だけでも
昔と比べるとだいぶ平均値は高くなった

なので
定期的に地上に降りないと
魂と入れ物が合わなくなる

そして生まれ変われず
成長が止まった魂はやがて消滅する

大多数は消滅を望まない
だからまた僕も次の入れ物を探さねばならない

やれやれとため息をつく

今度はもう少し穏やかな人生が良いな
そう思いながら地上を見下ろした
posted by 華涼紗乃 at 10:14| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"いつからか"

深夜に帰宅しても
妻はいつも起きて待っていてくれる

寝ててくれて良いと言うが
悪い電話で起こされたくないと言う

妻もかつては同じ仕事をしていた
今は引退したとはいえ
玄関の脇の物入れには
今でも現役のときの道具が一式
いつでも使える状態でしまってあることも知っている

俺に何かあったら
助けに来るつもりなのだ

いろんな意味でぎりぎりな仕事だ
自分が生き続けるべきか常に試される
それが中毒になって今でも普通にはなれない

相棒もそのクチだ
くるくる変える表情
すばやい身のこなし
若い娘と侮ったら
とんでもない目に遭う

今日も愛人さんは良い仕事をしてくれたのかしら?
問題ない、ただ、はしゃぎすぎるのがちょっとな
まあ、デートがそんなに楽しかったのかしら?

俺が苦笑を返すとうふふと楽しそうに妻が笑う

いつからか妻は相棒を愛人と呼ぶようになった
あなたの相棒という立場を奪ったのだから
当然なんだそうだ

妻は笑みを浮かべて
俺に近づいてゆっくりと抱き締める

お帰りなさい
ただいま
posted by 華涼紗乃 at 10:13| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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