2011年02月19日

『入れ物』

 ───とても綺麗な硝子の器

 曲線はなめらかにそのかたちを描き
 薄い光を受けてそれは流水のよう
 手で指で触れられる事実が奇跡に近い

 澄み渡る、純粋な、すきとおった、その硝子

 脆くて儚くて、繊細であくまで弱いその器を
 さまざまなものが好き勝手に満たす
 遠慮容赦なく、寸瞬の躊躇もなく

 透明な器はひろく開け放たれていて
 何物であれ何一つ拒めない

 それが『入れ物』のさだめだからと
 声をあげることもせずにただ受け容れて

 受け容れて受け容れて、ひたすらに受け容れ続けて

 ───綺麗な器はくだけてしまった

 きらめく破片は粉々で、あまりにも粉々で

 かき集めることも出来やしない
 かぞえることも出来やしない
posted by 樋川春樹 at 23:05| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『いつからか』

 何でもすぐに忘れてしまうし
 何にでもすぐに慣れてしまう

 生きているとはそういうことだ

 憶えておこうとしてもままならないし
 新鮮な気持ちを保つことすら出来ない

 全てがすぐに日常になる
 どんな新奇なものもやがては
 ありふれたものへと成り下がる

 いつからか昔のことを思い出さなくなった
 とおいとおい、昔のこと
 本当に昔のことだったかもあやふやになるぐらいに
 遥か過去のできごと
 それでもかつては折にふれ思い返していたはずなのに
 いつからかふと考えることさえしなくなっていた

 そこから遠く遠く離れて暮らすことに
 すっかり慣れてしまったから
 だから、忘れてしまったのだ

 『必要のない』ことを

 かつては大事だと思っていたことだったのに
posted by 樋川春樹 at 22:52| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『うつむく』

焦点の定まらない目を時折ゆっくりしばたかせ、じっと同じ場所に佇む。
何かを待つように、何かを耐えるように。

彼女はいつからそこにそうしていたのだろう。
何を考え、何を見ていたのだろう。

表面上は、静かに落ち着いている。
けれど彼女の内側には、激しい嵐が起こっている。

ぴっちりと鎧戸を閉めたように、彼女はそれを周りに悟らせない。

何にも興味のない顔をして、何にも傷つかない顔をして。

自分が強い意志さえ持てば、何者にも侵されない、流されない、彼女だけの居場所。

そこに『誰か』は必要ない。

たったひとりの場所は、いつまでいてもいいけれど、広くて、寒くて、ただ静かで。

寒さにも静けさにも、いつまでだって耐えられるけれど。
流されたくはない、傷つきたくはない、だけれど。

音のない嵐が吹き荒れる世界に、ひとすじの陽射しを見つけられたら。


彼女はじっと佇む。

何かを待つように、何かを耐えるように。

いつまでそうしていたか、わからないけれど。

彼女がふいに、顔を上げた。

視線の先には、光があった。

…歪んだ、悲しい光だった。

そうして、彼女は歩き出す。

痛みのない、ひとりぼっちの世界から。
posted by 葉瀬尋 at 21:46| Comment(0) | ひろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

≡うつむく≡

ねぇ
そんなに下ばかり見てないで
顔をあげてごらんよ

私は彼女に声を掛ける

だってあまりにも下ばかりみて
それじゃあ
コンクリートしか見えないと思うんだよね

こんなにも空は青いのに
太陽がキラキラしてるのに
もったいないよ

ほら
ひまわりを見てごらんよ
あんなにも太陽の光を全身に浴びて
だから黄金色に輝いてるんだよ
まるで太陽を象徴したかのような花だよね

君だって輝けるんだよ
ひまわりのようになれるんだよ
だからね
もっと前を見て
自信をもって歩いて行きなよ

うつむきかけたら
私がいつだって叱咤してあげるからさ

だからね
勇気を出して

posted by 月姫瑠璃愛 at 17:43| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

□入れ物□

大切なものならしまっておきなさい

そんな言葉が脳裏をよぎる

そう
だからこんなことになってしまった
誰にも触れさせないで
誰にも見せないで
私だけのものに

その瞳も
その唇も
その腕も
その胸も
その背も

すべて
すべて
すべて

私だけのもの

そう
あなたは私だけのもの

誰かのものになるくらいなら
これでいいのだ

たとえそれが
もう動かないものだとしても






posted by 月姫瑠璃愛 at 17:30| Comment(0) | るり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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