2011年02月13日

『あとすこし』

 「いつまでも」続かないことはわかってる
 「終わらない」ものなんてどこにもなかった

 どんなものもいつかは終わる
 終わらなくともそれは「変わって」
 けっきょく終わったのと同じことになる
 永遠に続くものなんてない

 ずっとみてきたから
 それを知ってる
 何十年何百年かけて
 ちゃんと勉強した

 「いつかは終わる」
 この時間
 ダイスキなヒトのそばにいる
 この時間も
 いつかは

 けれどそれでも
 それでももうすこし
 あとすこしでも
 そんなことは忘れたふりして
 最初から知りもしなかったふりして

 あのヒトのそばに座っていたいんだ
 寄り添って座っていたいんだ
posted by 樋川春樹 at 23:20| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『圧力』

 ひとには決して届かぬはずのその場所に、彼女は居場所を見つけた。

 そこには自分を必要としてくれるものがいて、自分だけにしか出来ないことがある。

 いまあるすべてを捨て去る勇気はどうしても得られなかったけれど、彼女にとってそこはとても大切な場所。

 生まれて初めて、これまで生きてきた中で初めて、自分の価値を感じさせてくれる、自分がここにいて生きているのだとわからせてくれる。そんな場所。

 とても大事な場所なのに、なのにそんな場所にさえ、彼女は「ただ居る」ことが出来ない。

 そこに居たければ、居続けたいのならば。
 求められている役割を果たせ、役に立つ存在であれと。

 声がきこえるのだ。
 『圧力』を感じるのだ。

 居場所をなくしたくなければ相応の働きをせよと。
 幸福を失いたくないのならば自分の力でしがみつけと。

 それは彼女にしか聞こえぬ声。
 それは彼女にしかわからぬ重圧。
posted by 樋川春樹 at 21:29| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『握手』

 利き手を握り合い自分は武器を隠し持っていないと示すあの行為は、『握手』と呼ばれて互いに敵意がないことをあらわすためになされるものだそうだ。

 にこやかな笑顔を浮かべて、報道陣の前でかたく握手を交わしてみせる二人の指導者。
 けれどそんな振る舞いに一体どれほどの意味があるものだろうか。
 争いが起こっても実際に武器をとって戦うのはどうせ彼ら自身ではないのだ。

 そんな風に考えてしまうそれ自体に本当はもはや意味がない。
 記録映像の中の二人の握手から五年を待たず、この『枠』は大きな争いのせいで自滅してしまったのだから。
 総人口の実に九割以上が一日のうちに死に絶えた未曾有の惨劇のあと、生き残った連中も文明を立て直すことは出来ず、と言うかそのときには既にその世界はやがて滅びるしかないほどの深刻なダメージを受けていて。
 あれこれ足掻いたようだけれど、二十年ももたなかった。『木偶』に目をつけられもしないうちに勝手に破滅するなんて、お気の毒としか言いようのない『枠』だった。

 …もう何か月もの間、そんな風に『自滅した世界』がこの図書館に遺した記録映像を、眺め続けている。
 何のつながりも、何の関係もない世界の。
 もう二度と帰らない時間を、永久に焼きつけた記録映像。
 好奇心からではないし、無駄な感傷に浸りたい気分だからでもない。
 探しているんだ。
 見つかるかどうかもわからないものを。
posted by 樋川春樹 at 21:10| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"あとすこし"

手を伸ばす
伸ばせるだけ伸ばして
肩から指まで突っ張れるだけ突っ張って

もう少し
あと少し
見えているものなのに
指はいつでも空を切る
届きそうなのに届かない

諦められたらどんなに楽だろうかと思う
だけど諦められないから仕方がない
いっそ目の前から消えてしまえば
まだ諦めがつくのに

期待と落胆の繰り返し
そんなことにももう慣れてしまったけれど

空を切った手を見つめる
じっと見つめる
こぶしが白くなるくらいまで
ぎゅっと握り締める

そうしてまた手を伸ばす
いつか届く日を
ただ、ただ、祈りながら

posted by 華涼紗乃 at 11:48| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"圧力"

始まりはほんの些細なことだった

でも

ひとつ心にタネが撒かれれば
自分の思惑とは別の方向に育ちだす
もっと根源的で原始的な欲求は
理性をたやすく凌駕する

想像力は誰にも侵されないから
その分、歯止めは利かない
どんどんどんどん膨らむタネは
心を丸ごと飲み込み、包み込み、
それでもまだ成長が止まらない

理性で力任せに押さえつければ
軋轢を生み
心が更に傷つき
透明な血を流す

綺麗で、綺麗で、
悪い意味なんかひとつもないような
純粋で、純粋で、
そこに穢れなど一切ないような
そんな言葉だからこそ甘い夢を見る

身体から、噴き出せば、
それはただの歪んだ暴力にしかならないのに

圧力はどんどん高まっていく
重いものでふたをしても仕方がないだけ

破裂する前に壊さなければ
ほんの小さな針さえ
ここにあればいいのに
posted by 華涼紗乃 at 11:48| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"握手"

言葉数は本当に少ない
一緒にいるときは
私が話してばかりいる

そのくせ
仕事のときの指示は的確で無駄がない

もう長いこと組んで仕事をしてるのだから
もう少しビジネスライクから
抜けても良いじゃないかとたまに思う

当然、仕事以外での付き合いはない

でもまあ
少しずつ打ち解けてくれてるんだろうと思う

無事を祈ってする開始の握手
成功を祝ってする終了のハイタッチ

力の入れ具合やしぐさ、手の温度
一瞬でも触れ合うと
何かわかることがあるものだ

信頼できる
信頼してくれている
それがこの仕事の要だから

今日も手を差し出す
パシッと大きく手を合わせて握ってくれる

そこさえ揺るがないなら、それでいいのだ
posted by 華涼紗乃 at 11:47| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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