2013年07月03日

【詩ナラヒ】第1集 終了です!

 お疲れ様です、樋川春樹です。

 昨年11月1日よりスタートしました、『100のお題で文章表現【詩ナラヒ】第1集』。
 本日、樋川・華涼ともお題100個分全ての投稿を終えて終了の運びとなりました。
 お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!

 次回企画につきましては、現在調整中となっております。

posted by 樋川春樹 at 23:06| Comment(0) | 連絡帳。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『最果て』

 何のために生まれたのか、何のために生きるのか。
 生涯に渡ってそんな疑問に悩まされ続けるのは、きっと無知で愚かな人間たちだけだ。
 他の動物や植物はそもそもそんなことを疑問に思わないだろう。
 『狩人』としてつくられたボク達は、自分が何のために───誰のために、何をするために此処にいるのか、最初から完璧に理解している。
 空色の『竜』だってきっとボク達と同じだ。自分が何をしに此処へやって来たのか、何をするために此処にいるのか───完全に空の色と同調する綺麗なウロコを持つあの『竜』は、最初の最初からそれを知っている。

 『マスター』がスケッチブックに描いた『竜』の絵に、短いテキストを添える作業を先日から始めた。
 繊細なタッチで描かれ、鮮やかな色彩をまとった何枚もの『竜』の絵。
 絵本や画集をつくろうとする意思は別にないのだけれど、結果としてこれはそういうものになるのかもしれない。
 美しいけれどどこかに深いかなしみと拭い難いあきらめのようなものを感じさせる『マスター』の絵を、一枚につき数時間も十数時間もじっくりと眺めて瞳と心にしっかりと焼きつけて、ボクの中にある語彙を総動員して相応しいフレーズを考え出す。
 それは傍目から見ればとてつもなく地味で時間だけがやたらとかかってそもそも何でそんなことをしているのだろうと不思議に思うような作業かもしれないけれど、ボクにとってはとても充実している満ち足りた時間をもたらしてくれるものだった。

 これが画集になるにせよ絵本になるにせよ、その中身はボク自身と『マスター』の二人しか知らない。
 あらゆる『枠』の内側で書かれたり描かれたりした全ての書物が集まる最果てであるこの図書館の中で本を書いたら、その本はどういう扱いになるのだろう? ただちに複製されてもう一冊が棚におさまり、その瞬間を目撃出来るのか、あるいはこの図書館と言えど『枠』の外で書かれた本までは蒐集出来ないのだろうか。
 『枠』の外で書かれたと思しき本はこの場所には一冊もないけれど、そういう本が存在するという噂を聞いたこともないから、そういう本がどうなるのかはボクにさえわからない。
posted by 樋川春樹 at 22:57| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"起承転結"

今日はどしゃ降りの雨
街全体が灰色に染められる
山の向こうの研究所も
動物園も美術館も
ファミレスもごみ捨て場も
そして駅も

ラッシュ時のホームは混雑している
みんなきちんと順番に並んで
寝不足の顔で電車を待ってる
ペットボトルの飲み物を飲みながら
喫煙所で煙草を吸いながら
そんな風景を見下ろしながら
ゆっくり点滅する看板の上に佇んでいた

背中にある片方だけの翼の存在とこのシステムには
もう慣れたけれど
それでもこの重みは歓迎できるものではない
もう長いことこの姿なのだから
新陳代謝でなくなったりしないのかと考える
まあもう生きてはいないけれど

駅や線路は願ってもない私たちの狩場
こんな鬱々とした一日は飛び込みたくなる者も多い

そんなときは思考のらせん階段を知らずに降りてゆく

善悪とか非暴力とかいうアラームがぶっ壊れてる人だった
圧倒的な力で持って何もかも破損し、何もかも没収する
金持ちの跡継ぎで甘やかされたのだろうがあまりにもひどかった

おもちゃ箱のおもちゃはことごとく壊れ
本棚の本は汚れて
お気に入りのレターセットも
遊びに行った場所のパンフレットも
大好きな映画の原作本も
クロゼットの奥にしまっておいた
コンサートのチケットも
レシートを見つけられ破り捨てられた

その度に廊下の隅のデットスペースで泣いていた
泣きながら乱雑に散らかって
全部濁点の呪詛だけ吐き続ける頭の片隅で考えていた

隠しごとをしたら告げ口され
慎重に抜け道を探しても結末は同じ
起死回生の見通しなんて立たない
小手先では一進一退を繰り返すだけ
吸血鬼のようにハンターのように
待ち伏せされ搾取されるだけ

普通で当たり前の幸せの起承転結
それすら何故望めないのだ

だから迷走した頭が書いた設計図にのった
殺されたフリをして自殺するという時限爆弾
思考だけは自分が透視できるのかと思うほど読みやすかったから

インパクトのある事件になったから話題になった
料理人のアイツは容疑者になり
三角関係の末、ストーカーしてたことも明るみに出た
お節介なマスコミはあることないこと探索し
様々な憶測が飛び交い、雑誌は売れ、一種のイベントにさえなった
最初は半信半疑の人たちでさえ
巻き込まれるのを嫌って離れていった

計算ミスは使いまわしのメールの手抜き加減とか
証拠に用意したキーホルダーが中古品だったこととかを
あっさり見破られたこと
私を調べた年上の医師が優秀だったこと

今の私の存在に認証とか署名とかいらないから
見取り図さえあればどこへでも行ける
この件の報告書を読んだときすばらしいとさえ思った
今思うとシュレッダーにかけてやれば良かった

演技してまで陥れようとした私をみんな恐れた
名無しの私は被害者ではなく主役になった
でもその件で合法でもアイツは社会制裁を受けてダメになった

雨がやんで空がだんだん明るくなってきた
まだ雲が空を覆っているのに光源はどこなのだろう
透明感のある空気が街中を包んでいく

線路には今日は獲物はかからなかった
駅の中に舞い降りる

バリアフリー対策のスロープに
カードの落とし物を見つけた
買い取り専門店のポイントカード
見覚えのある名前にぞっとした

意識は真っ黒に塗りつぶされた
まだまだ懲りてないらしい
先約があったけれど意識の中から消し飛んだ

そして自然と以前使っていた帰り道へ向かった

喫茶店のメニューを読む
サンドイッチにホットケーキ
アイスクリームにハニートースト
りんごのジュース
食べたいけれどもう無理だ
氷水を出されている客がうらやましい

たい焼きやスナック菓子を
ほおばって遊ぶ子どもたち
そんな簡単なことも出来ない

お洒落なメゾネットタイプのマンションが見えてきた
あのおぞましい日常の近くで
再出発なんて良い度胸だ

もう一度きっちり突き落とすことに決めた
そしてその翼をひとかけらも残さず喰ってやる
posted by 華涼紗乃 at 20:18| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月26日

【指令】最終週:華涼→樋川

++++


ごきげんよう、樋川嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の一つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『最果て』

・期限は2013年7月3日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年7月1日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


++++
posted by 華涼紗乃 at 23:31| Comment(0) | 指令書。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"パンフレット"

全部、全部とっておくのよ
あなたといった場所の思い出の品は

映画のパンフレット
住宅展示場のパンフレット
結婚式場のパンフレット

全部、全部

あなたの声も残らず録っておくの
カメラを回したらさすがに失礼だから
声だけでもちゃんとね

何回も見て、何回も聞いて思い出すの
あのときの幸せな気持ちとか
あのときのあなたの表情とか

だってもうあなたは私の傍にいられないもの
しょうがないわよね?
私を騙すなんて本当にタチの悪い冗談だわ
だからしばらくお灸をすえてもらうの

大丈夫、ときどきは会いに行くわ
ちゃんと反省したら迎えにも
いってあげるからね

そのときは

忘れ物なく、時間もぴったりに
完璧なタイミングで現れるから待っていてね


posted by 華涼紗乃 at 23:28| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"レターセット"

新品のレターセットを買ってきた
真っ白の紙に灰色の罫線だけひいてある便箋
郵便番号を入れる欄だけ真っ赤に印刷されている封筒

今から書く文章に
最大限のインパクトを与えるため
極端にシンプルなものを選んだ

ふうと一息ついて
ブルーブラックのボールペンで書き出す
三行書いて丸めてポイ
五行書いて破いてポイ
恨みつらみが多すぎて
ひとつの話を完結する前に
他の話が浮かび上がってきてどうにもならない

頭をぐしゃぐしゃとかきむしる
もうあの人のことで悩まされるのは嫌なのだ
だから短く書いた

この期に及んであれもこれも書いたって
何にもわかってなんてくれないだろうから

私のことは忘れてください
死んだと思ってください
私もあなたのことを死んだと思うことにします
もう二度と会うことはありません
永遠にさようなら

便箋の真ん中にそう書いて
最後に署名をしたためた
三つ折りにして封筒に入れる

あの人がこれに気づく頃
私はすでに空の上だ

あの人を国ごと捨てていく
もう戻らない、永遠に

posted by 華涼紗乃 at 23:27| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

"跡継ぎ"

生まれたときからその後の生き方が
何もかも決まっている人というのは確かにいる
小さい頃からその世界に閉じ込められ
その世界でしか生きられなくされていく

何らかの葛藤がありながらも
そのまま生きることは
その生き方に何らかの魅力があるからなのだろう

何の道筋も決められず
すべて自由に生きてきたといっても
所詮は何もかも流されて
そこそこの場所にいてさえ

生きるのに窮屈なのは何も変わらない
posted by 華涼紗乃 at 23:26| Comment(0) | はな | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【指令】最終週:樋川→華涼

++++


ごきげんよう、華涼嬢

さて、今回の任務の内容を伝える。
以下の一つのタイトルについて文章作品を完成させて欲しい。

『起承転結』

・期限は2013年7月3日23時59分までとする。
・任務完了後、「@utanarahi」まで必ず報告をすること。

なお、次回の指令は2013年7月1日0時より、期限までに発表する。

では、任務の成功を心より祈る。


++++
posted by 樋川春樹 at 19:47| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『アプリ』

「それじゃあ、このアプリの使い方を簡単に説明しておくよ。マップ上のこのマークが自分の現在位置。目的地は複数指定可能で、ここをタップするとガイドカーソルが表示されて、おおよその距離と到達予測時間がここに出る。現在位置はリアルタイムに反映され続けて、測定誤差は1センチ未満だから、この画面さえ見てれば道に迷うことはないよ。ん、何か質問? え、今いるココは中世ヨーロッパでGPSなんか存在しないのにどうやって現在位置を測定してるのかって? それに、航空機から観測でもしなければ描けないほど精巧な、この時代には絶対存在しないほどの詳細な地図がここに表示されているのはどうしてかって? うん、とても良い質問だけど、残念ながら今はそれを事細かに説明している時間がないから、『十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない』とだけ言っておくよ。次に、目的地の指定の仕方だけど、これには音声認識が利用出来て……」
posted by 樋川春樹 at 19:42| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『こぢんまり』

 テーブルの上で開いたノートパソコンのまわりに、やることを終えたみんながいつの間にか集まってくる。
 モニタ一面に表示された画像検索の結果一覧、その膨大な写真の列を眺めながら。
 こういう雰囲気がいい、こっちのこれも捨て難いんじゃないか? なんてとりとめのないことを口々に発言し合う。

 どこか静かな町に、こぢんまりとした可愛らしいカフェをつくって、平穏に生きてゆこう。
 ふつうの人間みたいに。

 思いつきの冗談だったその計画は皆で話題に乗せあっているうちにだんだんと明確な夢となり、いつしか叶えたい将来設計へと姿を変えていた。
 どういう内装にするか、どんな感じの食器を揃えるか、扱うメニューはどうするか、こうなったら制服だってデザインしてみよう。

 ドリンク単品にも、ちょっとしたお茶菓子をサービスするようにしよう。クッキーをたくさん焼いておいて、お皿の端にちょっと添えたりして。そうして、半日でも一日中でも長くいてもらえるぐらい、居心地の良い空間にしよう。採算がとれなくても構わない、自分達はお金を儲ける必要なんてないんだから。

 最初の最初からヒトではない彼らと、もうじきヒトではなくなってしまう私とが、人間としての平穏な暮らしに思いを馳せつつ、手が届きそうな錯覚に彩られた希望を語り合う。それはきっと叶わぬ夢などではなく本気でやろうと思えば今すぐにも実現出来る程度のもので、でもそれを本当にはしないでいつだって変更可能な曖昧な幻想として共有することで、私達は「同じ夢をみる」という遊びにいつまでも浸っていられる。
posted by 樋川春樹 at 19:41| Comment(0) | はる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。